5.画像診断fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=to63/62/10/KJ...・T1強調画像(左)で皮下脂肪と同じ高信号域の境界明瞭な囊胞性病変...

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5.画像診断

1)骨盤MRI 検査2)骨盤CT検査3)妊婦に対する放射線検査,MRI 検査

1)骨盤MRI 検査

・MRI とはMagnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像)の略であり,コイルに電流を流して磁場を発生させて撮影した画像である.・骨盤部ではMRI を,腹部ではCTを第一選択にする.・T1強調画像ではT1が長いほど磁化の回復が遅れるため信号が低く(黒く),T2強調画像ではT2が長いほど磁化の減衰が遅れるため信号が高く(白く)描出される.T1と T2の組み合わせで組織の成分が推定できる.

MRI 読影のコツT1 low,T2 high は 1 つ①尿,胆汁,膵液といった液体生体内では液体成分が最もT1,T2が長いため,尿,胆汁,膵液といった液体成分は,T1強調画像では真っ黒く,T2強調画像では真っ白く描出される.T1 high は 2 つ①脂肪②血腫たまにタンパク成分に富むものもあるので,卵巣囊腫でT1 high なら類皮囊胞腫か子宮内膜症性囊胞,まれにタンパク成分に富む卵巣囊腫があげられる.T2 low は 4つ①線維成分→子宮筋腫を含んだ fibroma②筋肉由来→子宮筋腫.しかし変性を起こすとT2 high になる③血腫→T1 high+T2 low が典型的.T2 low の血腫はT1 high の血腫より新鮮である.④ヘモジデリンなどの沈殿物

子宮筋腫

2010年10月 N―301

研修コーナー

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・T2強調画像でT2 low・子宮体部前壁から外方性に突出する充実性腫瘤(→)・小さな筋層内筋腫もある(矢頭)・境界明瞭・有茎性漿膜下筋腫の場合はT2 lowの卵巣腫瘍と鑑別→両側卵巣が存在するか確認する→T2 lowの卵巣腫瘍には,線維腫,莢膜細胞腫,Brenner 腫瘍,顆粒膜細胞腫,Krukenberg腫瘍,内膜症性囊胞,卵巣甲状腺腫がある

・小さいが多発性の子宮筋腫(矢頭)・子宮内膜は白い(←)

子宮腺筋症

・子宮体部後壁の筋層はT2 low・子宮筋腫との鑑別はT2強調画像で低信号域の境界が不鮮明・内部に点状のT2 high 高信号の散在する像(←)・子宮筋腫の変性の場合のT2 high は高信号域がもっと広く大きい

N―302 日産婦誌62巻10号

研修コーナー

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・血液成分はT1 high の点状高信号域を示すこともある・CTでは,単純,造影のいずれにおいても特異的な画像を描出するのが困難

・子宮体部前壁の筋層はT2 low

類皮囊胞腫(成熟囊胞性奇形腫)

・T1強調画像(右)で皮下脂肪と同じ高信号域の境界明瞭な囊胞性病変・脂肪抑制T1強調画像(左)で高信号が抑制される→内膜症性囊胞との鑑別

漿液性囊胞腺腫

・T1(左)low,T2(右)high・壁の肥厚なし

2010年10月 N―303

研修コーナー

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・充実部なし

内膜症性囊胞

・T1強調画像(左)で皮下脂肪と同じ高信号域の境界明瞭な囊胞性病変・脂肪抑制T1強調画像で高信号が抑制されない→類皮囊胞腫との鑑別・T2強調画像(右)での囊胞背側に信号低下が起こる→shading と呼ばれ特徴的

卵巣粘液製囊胞腺腫

左:脂肪抑制T2強調矢状断像,右:脂肪抑制Gd造影T1強調矢状断像・薄い壁で構成される囊胞性腫瘤・各囊胞性の大きさがさまざま・壁は造影されている・薄く平滑であり・壁が集簇したようにみえる部分(←)は境界悪性

卵巣卵管膿瘍

左:脂肪抑制T2強調矢状断像,右:脂肪抑制Gd造影T1強調矢状断像

N―304 日産婦誌62巻10号

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・厚い壁で構成される囊胞性腫瘤→卵巣卵管膿瘍・卵管が高度に拡張・壁は厚く造影→炎症性の肥厚

卵巣がん(卵巣明細胞腺癌)

左:脂肪抑制T2強調矢状断像,右:脂肪抑制Gd造影T1強調矢状断像・囊胞壁に充実性成分を有する腫瘤・単房性の囊胞の腹側に粗大な結節が存在・造影されている(矢印)・内膜症性囊胞に由来する明細胞癌

子宮頸がん

T2強調矢状断像・子宮頸部を占拠するT2 high(矢印)

2010年10月 N―305

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⎧⎨⎩

コンベンショナルCT(大根の輪切り的画像)

ヘリカルCT(りんごの皮むき的画像)

⎧⎨⎩

シングルスライスヘリカルCT

マルチスライスヘリカルCT

子宮体がん

左:MRI T2強調像 右:MRI 造影T1強調像(ダイナミック造影)・T2強調像で年齢不相応な内腔の拡大(患者年齢を記入してください)・正常子宮内膜よりも低信号を示す子宮体癌(矢印で示してください)・Junctional zone は保たれている・腫瘍―筋層境界は整・ダイナミック造影の一コマで,後壁側の subendometrial enhancement(SEE)が明瞭(矢印)・前壁側では SEEが不明瞭・SEEの所見から筋層浸潤の疑い→子宮体癌 pT1b

2)骨盤CT検査

CTには以下の 3種類があるが通常の臨床で用いるコンベンショナルCTについて述べる.

上腹部ではCTを骨盤部ではMRI を第一選択にする.類皮囊胞腫

N―306 日産婦誌62巻10号

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・囊胞内容に脂肪と思われるCT値の低い部分(矢印)・充実性部分に歯牙と思われるCT値の高い部分(矢頭)・脂肪と石灰化を含む腫瘤で典型的

子宮筋腫

扇和之,山下晶祥.腹部・骨盤部CT ここが読影のポイント 第4章02 子宮筋腫 165頁「病変」羊土社・子宮に大小の充実性腫瘤の多発をみる(矢印)・奬膜下筋腫の場合は子宮外方に突出する・奬膜下筋腫は卵巣腫瘍との鑑別が重要・高齢者の子宮に石灰化があったら子宮筋腫を疑う

卵巣囊腫

・多囊胞性の巨大な囊胞・隔壁が薄く(矢印),充実部や壁の肥厚も認められない→良性卵巣囊腫

2010年10月 N―307

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卵巣がん

・子宮(矢頭)の右側から後方にかけて巨大な多囊胞性腫瘍・不規則な充実部と肥厚した隔壁(矢印)・囊胞性腫瘤を認めるが,造影剤でエンハンスされる

卵巣がん大動脈周囲リンパ節転移

・下大静脈外下方にリンパ節腫大(矢印)・リンパ節転移検出はCTの得意分野

子宮頸がん

N―308 日産婦誌62巻10号

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・CT画像(右)では子宮頸部(矢印)の腫大が観察されるが,MRI 画像(左)と比較して腫瘍そのものの描出は不十分・子宮頸部に境界不鮮明な低濃度腫瘤がみられる・頸部間質浸潤や傍結合織浸潤はMRI が優れる

子宮体がん

・CT(左):液貯留を伴った子宮体部の腫大・乳頭状に増殖した内膜の肥厚(矢印)・MR(右):矢状断での筋層浸潤や頸管浸潤の詳細な観察が可能・子宮体部に境界不鮮明な低濃度腫瘤あり

造影CT 横断像

・子宮体部内腔の拡大・子宮筋層より弱い増強効果を示す子宮体癌・腫瘍―筋層境界は不整(矢印)・強い増強効果を示している正常筋層部分から本来の筋層厚を推定し,腫瘍の広がりは1�2以下→pT1b であった

3)妊婦に対する放射線検査,MRI

妊娠中のレントゲン検査・妊婦が医療被曝を受けていなくても新生児の約3%は何らかの遺伝的障害を持って生まれてくる

2010年10月 N―309

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ことを理解する・受精後から 8週間までが特に放射線による影響を受けやすい時期・受精から15週までに100mSv以上の被曝をすると流産や奇形,発育遅延の可能性がある・100mSv とは胸部レントゲンで約1,000回,腹部レントゲンでは約100回を 1度に受けたときの被曝線量に相当・被曝線量が100mSvに達するような検査を妊婦に行うことはない

妊娠中のMRI 検査・放射線被曝はない・磁場が胎児に与える影響についてはあまり知られていない・種子の発芽実験や血液の性状の変化,さらには妊娠動物に対する曝露実験結果から催奇形性については否定的・羊水中の温度変化は認められない・医療用に実用化されてからまだ日が浅く,検査に用いる電磁波の第 1三半期間(妊娠期間の最初の1�3)の胎児への影響は不明・器官形成期の施行は慎重に行うべきであり,原則としてこの時期の妊婦のMRI 検査は行わない・ガドリニウム造影剤は妊婦と胎児に対する安全性が実証されていない・ガドリニウム造影剤は母乳にも移行するので24時間授乳を控える・MRI は少なくともX線検査よりは安全な検査法である

胎児MRI 撮影はどのような疾患に行うか・中枢神経系異常・横隔膜疾患・腹腔内疾患・尿路系異常

胎児脳くも膜囊胞(妊娠30週)

・T2強調画像:左が冠状断面,中が矢状断面,右が水平断面

N―310 日産婦誌62巻10号

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二分脊椎

T1強調画像・妊娠35週の胎児の全身が 1画面に描出・二分脊椎部分の皮膚欠損が明瞭に描出

本章の写真については以下のHPより引用したMRI子宮筋腫:http:��www.geocities.jp�ayu60435474�ope.htm

http:��www.m-satellite.jp�info_check�05.html子宮腺筋症:http:��k-sato.com�womensmed�adenomypsis.htm

http:��www.m-satellite.jp�info_check�05.html類皮囊胞腫:http:��www.hachicli-dock.jp�ladys�instance.shtml漿液性囊胞腺腫:http:��www.hachicli-dock.jp�ladys�instance.shtml内膜症性囊胞:http:��www.ladys-home.ne.jp�faqsite�ans-files�FAQ-H�FAQ-H6.html子宮頸がん:http:��www2.khsc.or.jp�gan_center�pdf�19-3-fujin.pdf

奈良県立医科大学 小林 浩

2010年10月 N―311

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