ASEANの50年と経済統合...2017/11/01  · ASEAN 設立50周年記念シンポジユーム...

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ASEAN設立50周年記念シンポジユーム2017年11月14日

ASEANの50年と経済統合

―ASEAN経済共同体(AEC)の創設と日本―

清水一史(九州大学)

shimizu@econ.kyushu-u.ac.jp1

2

構成

はじめに

ASEAN経済統合とAECASEANと東アジア地域経済協力

世界金融危機後のASEANと東アジア

2015年末のAEC創設と新ブループリント

まとめ

(参考)トランプショックとASEAN

3

はじめに(1)

ASEANは今年2017年8月8日に設立50周年

ASEANは東アジアの経済統合の代表 従来東アジアで唯一の地域協力機構

1967年以来、政治協力・経済協力を推進

加盟国も5カ国から10カ国へ

構造変化を続ける世界経済の下で、AFTAを確立し2015年末にAECを創設

AECは東アジアで最も深化した経済統合

4

はじめに(2) ASEAN地域は世界の成長地域 1980年代後半からの世界の成長地域

中間層も急速に拡大

現代世界経済においてASEAN経済の重要性が増大

AECを確立すると中国やインドにも匹敵する規模に

ASEANは東アジアの経済統合も牽引 東アジアの地域経済協力の延長に、RCEPを推進

日本にとってもASEANは重要 政治的にも経済的にも最重要なパートナー

日本企業にとっても最重要な生産基地・市場

5

本報告の課題

これまで世界経済とASEAN経済統合を長期的に研究

東アジアの経済統合も研究

ASEAN経済統合と自動車産業も研究

世界経済の構造変化の中での

ASEANの50年と経済統合について考察

ASEANと日本についても考察

2017年のトランプ大統領就任後の状況も考察

66

ASEAN経済統合:1976-2003 (1) 1967年設立:インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ

1976年第1回首脳会議と「ASEAN協和宣言」から開始

集団的輸入代替重化学工業化戦略

1984年ブルネイ加盟

1987年第3回首脳会議の「マニラ宣言」で転換

集団的外資依存輸出指向型工業化戦略へ

プラザ合意以降の各国の外資依存輸出指向の工業化を支援

1988年BBCスキーム(ブランド別自動部品補完流通計画)

1990年代の構造変化とASEANの対応

アジア冷戦構造の変化、中国の改革・開放に基づく急成長

1992年からAFTA(ASEAN自由貿易地域)

2008年までに先行加盟国は関税を0-5%とする。

1996年からAICO(ASEAN産業協力)の展開

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
各加盟国だけではなく、ASEANという単位で外資を呼び込み、 外資の経済活動を支援、 同時にそれを突破口として統合された域内市場の形成を目指し、 輸出可能な工業力をASEANに創出する MMCがASEANに提案して認められたスキーム 1980年代後半から始まったASEAN各国の工業化をASEANが集団的に支援達成 1985年プラザ合意以後の構造変化 直接投資の急速な拡大と急速な発展

77

ASEAN経済統合:1976-2003 (2) 1990年代の構造変化とASEANの対応

インドシナへの加盟国拡大:1995年ベトナム、1997年ラオスとミャンマー、1999年カンボジア、10か国体制へ

ASEANは世界経済の構造変化の焦点へ

国際資本移動の拡大+領域の拡大

アジア経済危機がASEAN諸国に大きな打撃

1997年「ASEAN Vision 2020」 アジア経済危機後の構造変化

中国の急成長と影響力の拡大

WTOによる世界大の貿易自由化の停滞とFTAの興隆

東アジアの相互依存性の拡大と東アジア大の地域協力の形成

域内経済協力の深化が不可避に

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
多国籍企業のより広域な国際分業の展開

88

AECへ向けての展開(1)「第2ASEAN協和宣言」とAEC

2003年10月「第2ASEAN協和宣言」とAEC ASEAN共同体(AC): ASEAN安保共同体(ASC)、ASEAN経済

共同体(AEC)、ASEAN社会文化共同体(ASCC)により実現

ASEAN共同体(AC)の中心はASEAN経済共同体(AEC) ASEAN経済共同体(AEC):2020年までに

①物品②サービス③投資④資本⑤熟練労働力の自由移動

に特徴付けられる、単一市場・生産基地を構築

外国投資を呼び込むためにAEC AECは、ASEAN首脳のASEANによる直接投資を呼び込む能力へ

の危惧による

新たな投資受け入れ先としての中国・インドの台頭を背景

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
域内経済協力の深化と経済格差の是正 AC(ASEAN共同体)の形成 ASC・AEC・ASCC: ASEAN安全保障共同体、ASEAN社会文化共同体 ASEANがEUのような単一市場を、あるいは要素の移動を含む共同市場を実現しようとする構想 2004年12月第10回首脳会議とVAP(ビエンチャン行動計画):ASEAN共同体

99

AECへ向けての展開(2)憲章制定とAECブループリント

2004年12月第10回首脳会議とVAP(ビエンチャン行動計画) AECの推進と域内経済格差の是正

2007年1月第12回首脳会議 AECの2015年への前倒しを承認

2007年11月第13回ASEAN首脳会議 「ASEAN憲章」に署名 ASEAN憲章の制定自体がAECの実現のためという側面

ASEANの目標、基本原則、ルールを明確化

多くの制度化の実現によりAEC実現を支援

2008年12月に発効

「AECブループリント」を発出

10

AECへ向けての展開(3)AECブループリント

AECブループリント:AECの目標(統合の深化と格差是正) AECの2015年までのロードマップ

AECの4つの戦略目標(統合の深化と格差是正)

A.単一の市場と生産基地(4つの戦略目標の中心) ①物品の自由な移動

②サービスの自由な移動

③投資の自由な移動

④資本の自由な移動

⑤熟練労働者の自由な移動

B.高度な競争力のある経済地域

C.公平な経済発展の地域

D.グローバルな経済へ十分に統合された地域

AECへ向けての展開(4)AECスコアカードと連結性マスタープラン

2008年からAECスコアカードと事務局によるモニタリング

AECブループリントの各国ごとの実施状況の点検評価リスト

2010年から「ASEAN連結性マスタープラン(MPAC)」 2015年のAECの実現を確実にする 域内格差の是正を支援 ①物理的連結性 ②制度的連結性 ③人的連結性

AECへ向けて着実に行動11

12

ASEAN経済統合の成果(1)AFTAによる関税の引き下げ

ASEAN域内経済協力の成果:着実な成果 AFTA・CEPTにより1993年から関税引き下げ 2003年1月に先行6か国で関税5%以下の自由貿易地

域が確立 2010年1月に先行6か国で関税撤廃し、AFTA実現 同時に新規加盟4か国でも全品目の98.96%の関税が

5%以下に 各国のAFTA利用率の上昇

タイのASEAN向け輸出のAFTA利用率(シンガポールを除く) 2000年:約10%→2003年:約20%→2010年:38.4%

タイのASEAN各国向け輸出のAFTA利用率 2010年:インドネシア向け61.3%、フィリピン向け55.9%

13

ASEAN経済統合の成果(2)国際分業と生産ネットワークの支援

経済統合が国際分業と生産ネットワークを支援 自動車産業が典型:自動車部品補完計画は最も早くから着実に実践

ASEANでは日系自動車のシェアがきわめて大きくネットワーク構築

BBCスキーム(1988)、AICOスキーム(1996)、AFTA(1992)に支援されて、トヨタ自動車などがASEAN域内で主要部品の集中生産と部品の相互補完。

トヨタ自動車のIMVの例(2004年から)

1トンピックアップトラックベース車を部品調達から生産と輸出まで各地域内で対応するプロジェクト

1次部品メーカー、2次・3次部品メーカー、素材メーカーをも含め重層的な部品補完・生産ネットワークを拡大

(AICOと)AFTAが支援

ASEAN域内経済協力と企業の生産ネットワーク構築の合致であり大きな成果

トヨタ自動車IMVの主要な自動車・部品補完の概念図

◎PU ◎SUV(マザー工場)

タ イ

◎ミニバン(マザー工場)○SUV

●ガソリンエンジン

インドネシアインド

○PU ○SUV○ミニバン

マレーシア

フィリピン

○ミニバン○ SUV

ベトナム

☆地域統括(販売・マーケティング)

シンガポール

●ディーゼルエンジン●ガソリンエンジン

☆地域統括(調達・物流・品質

管理・開発)

○ミニバン

●マニュアル・トランスミッション

○ミニバン○ SUV

●マニュアル・トランスミッション

ASEAN

PUSUV

ミニバン

ディーゼルエンジンガソリンエンジン

マニュアル・トランスミッション

(出所)清水(2011a)、p.79。

(注)ヒアリングをもとに筆者作成。

ASEAN各国

ASEAN各国

15

東アジア地域経済協力とASEAN(1) 東アジア地域経済協力:アジア経済危機を契機に展開 ASEAN、ASEAN+3、EAS、ARF、APECなどの各種の

協力枠組みが、多層的・重層的に展開:中心はASEAN ASEAN+3首脳会議(1997年12月第1回)

通貨金融協力:CMI(チェンマイイニシアチブ)

EAS(東アジア首脳会議)(2005年12月第1回) ASEAN+1のFTA網の構築: 2010年に完成

ACFTA(ASEAN中国自由貿易地域) AJCEP(ASEAN日本包括的経済連携) AKFTA(ASEAN韓国自由貿易協定) AIFTA(ASEANインド自由貿易協定) AANZFTA(ASEANオーストラリア・NZ自由貿易協定)

ASEANルールが東アジアへ拡大

3マレーシアシンガポールブルネイベトナム

ラオス ミャンマー

カンボジア

日本 中国 韓国

オーストラリアニュージーランド

インド

アメリカ ロシア

EU

パプアニューギニア 東ティモール モンゴル パキスタン北朝鮮 バングラデシュ スリランカ

APEC(FTAAP)

ペルーメキシコチリ

ASEAN+3(EAFTA→RCEP)

ASEAN+6(CEPEA→RCEP)

ASEAN(AFTA)

ASEAN地域フォーラム

ASEANを中心とする東アジアの地域協力枠組みとTPP

出所)筆者作成。注)( )は自由貿易地域(構想を含む)である。ASEAN:東南アジア諸国連合、AFTA:ASEAN自由貿易地域、

EAFTA:東アジア自由貿易地域、EAS:東アジア首脳会議、CEPEA:東アジア包括的経済連携、RCEP:東アジア地域包括的経済連携、APEC:アジア太平洋経済協力、FTAAP:アジア太平洋自由貿易圏、TPP:環太平洋経済連携協定。

EAS

カナダ

ASEAN拡大外相会議

香港台湾

TPP

インドネシア

フィリピン

タイ

17

世界金融危機後のASEANと東アジア(1) 世界金融経済危機後の世界経済構造の変化

アメリカの過剰消費と金融的蓄積に基づく、世界経済の成長の限界 ネオリベラルの四半世紀の転換

ASEANと東アジア 世界経済でより重要な位置 金融危機からいち早く回復 世界経済における主要な生産基地 所得上昇と巨大な人口により主要な消費市場

アメリカ 輸出を重要な成長の手段 2010年1月輸出倍増計画 東アジアへの輸出 TPPへ参加

18

世界金融危機後のASEANと東アジア(2) 東アジアの需要とFTAを巡って競争が激しく WTOの停滞の下、新たな貿易自由化と世界経済

管理が必須 ASEANにとっても域外需要の確保とともに域内

需要に基づく発展の支援が更に重要に

広域FTA構築の加速:TPPとRCEPの構築へ TPP:環太平洋経済連携協定 RCEP:東アジア地域包括的経済連携 ASEANが提案して交渉をリード。

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世界金融危機後のASEANと東アジア(3):広域FTA構築の加速

2010年3月に8か国でTPP交渉開始(10月にマレーシアも参加) 2011年8月ASEAN+6経済相会議で日本と中国が共同提案 2011年11月APEC首脳会議でTPPの大枠合意 日本がTPP交渉参加へ向けて関係国と協議に入ることを表明

2011年11月ASEAN首脳会議でASEANがRCEPを提案 ASEANを中心とする東アジアのFTA

2012年8月第1回のASEAN+FTAパートナーズ大臣会合 ASEANとASEANFTAパートナーの16か国がRCEPを推進 「交渉の基本指針」:既存のASEAN+1を上回るFTA

2012年11月オバマ大統領再選:アジア重視とTPP推進 2012年11月第7回EAS 2013年早期にRCEPの交渉開始に合意

2012年11月日中韓経済貿易相会議:2013年に日中韓FTA開始で合意

世界金融危機後のASEANと東アジア(4):広域FTA構築の加速 2012年12月第15回TPP交渉会合

カナダとメキシコが参加、11カ国体制に

2012年12月安倍首相就任:ASEAN重視外交

2013年3月日本がTPP交渉参加を正式表明

2013年3月日中韓FTAへ向けた第1回交渉会合

2013年3月日本とEUが、経済連携協定(EPA)の交渉開始を宣言

2013年5月RCEP第1回交渉会合

2013年7月第18回TPP交渉において、日本の交渉参加が実現

その後TPPとRCEP交渉が継続。ただしTPP交渉は難航。

広域FTA構築が加速

日本のTPP交渉参加が更に広域FTA構築を加速させる

広域FTA構築の加速はAECの実現を更に追い立てる20

2015年末のAECの創設(1)

「A.単一市場と生産基地」:

①物品の自由な移動 関税の撤廃は、AFTAとともにほぼ実現(◎) :

2015年1月1日全加盟国の関税撤廃割合は、95.99%

尚、新規加盟4か国は、品目の7%までは2018年1月1日まで撤廃猶予

原産地規則も改良(○)。ASEANシングルウィンドウも進展(△)

しかし、非関税措置の撤廃は、2016年以降の課題(☓)

②サービスの移動(〇)、③投資(〇)、④資本の移動(○)、⑤熟練労働者の移動(△)は、徐々に。

21

22

2015年末のAECの創設(2) AECの4つの戦略目標(統合の深化と格差是正)

A.単一の市場と生産基地(戦略目標の中心)

①物品の自由な移動 関税の撤廃◎①´物品の自由な移動 非関税障壁の撤廃×

②サービスの自由な移動〇

③投資の自由な移動〇

④資本の自由な移動〇

⑤熟練労働者の自由な移動△

2015年末のAECの創設(3) 「B.競争力のある経済地域」(○)

「C.公平な経済発展」(○) 輸送プロジェクト、エネルギープロジェクト、経済格差の是正、知

的財産における協力の進展

「D.グローバルな経済統合」(◎) ASEAN+1の整備やRCEP交渉の進展:当初予想よりも達成。

2015年12月31日は重要な通過点

次のAECの目標は2025年:「AEC2025」

23

2424

2015年末のAECの創設(4) ただし統合への遠心力 各国政治の不安定と各国間政治対立 発展格差 各国の自由貿易へのスタンスの違い 南沙諸島を巡る各国の立場の違い それにも関連する各国の中国との関係の違い

しかし現代世界経済の下で発展のために、AECの確立と統合の深化が不可避

東アジアの地域協力においてイニシアチブを握り続けることも肝要

2015年末を通過点に、更にAECの実現へ

2015年11月ASEAN首脳会議と「AECブループリント2025」 2015年11月ASEAN首脳会議

これまでのAECの状況に関する報告

『AEC経済共同体2015』 『ASEAN統合レポート2015』 『ASEAN2025』

『ASEAN2025』:2025年に向けてのASEAN統合のロードマップ

「APSCブループリント2025」、「AECブループリント2025」、「ASCCブループリント2025」

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「AECブループリント2025」(1) 「A.高度に統合され結合した経済」

①物品貿易、②サービス貿易、③投資環境、④金融統合、金融包摂、金融の安定、⑤熟練労働とビジネス訪問者の移動促進、⑥グローバル・バリュー・チェーンへの参画強化

「B.競争力のある革新的でダイナミックなASEAN」

①効果的な競争政策、②消費者保護、③知的財産権協力の強化、④生産性向上による成長、技術革新、研究開発等、⑤税制協力、⑥ガバナンス、⑦効率的・効果的規制、⑧持続可能な経済開発、⑨グローバルトレンド・通商の新たな課題

26

「AECブループリント2025」(2) 「C.強化されたコネクティビティーと分野別統合」

①交通運輸、②情報通信技術、③電子商取引、④エネルギー、⑤食糧・農業・林業、⑥観光、⑦保険医療、⑧鉱物資源、⑨科学技術

「D. 強靭で包括的、人間本位・人間中心のASEAN ①中小企業強化、②民間セクターの役割強化、③官民連

携(PPP)、④格差是正、⑤地域統合に向けた努力への利害関係者による貢献

「E.グローバルASEAN」

域外国との経済連携協定の改善、協定未締結の対話国との経済連携強化等

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「AECブループリント2015」と「AECブループリント2025」

AEC2015(2007年) AEC2025(2015年)

単一市場と生産基地 高度に統合され結合した経済

競争力のある経済地域 競争力のある革新的でダイナミックなASEAN

強化された連結性と分野別統合

公平な経済発展 強靭で包括的、人間本位・人間中心のASEAN

グローバルな経済統合 グローバルASEAN

28

29

ASEANと日本(1)

ASEANは日本にとっても最重要なパートナー

これまで40年以上にわたり緊密な関係を維持

政治経済的にASEANとの関係強化が不可欠

日本企業にとっても生産ネットワークを構築し最重要な生産基地・市場

AECへ向けて更に関係の深化が必要

東アジアの経済統合に向けても重要

今後の日本とASEANの関係、日本のASEANへの協力についていくつか提言

それらは既に進められているものも多いが、更に協力が必要

30

ASEANと日本(2) ASEAN統合の「深化」と「格差是正」に向けた協力

統合の深化へ 統合の阻害要因の検討と解決への協力

ASEAN大で生産ネットワークを構築している日系企業からの視点で阻害要因を洗い出し、ASEANに提示

ASEANにおける物流円滑化への支援

ASEANシングルウインドウ(ASW)への支援。

ルール整備の協力:環境ルール、安全ルール、知財権ルール

格差の是正へ 物流インフラ整備への協力:ハードインフラ面での支援

統合のネガティブな影響を受ける各国へ支援

技術人材育成、裾野産業などへの支援

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ASEANと日本(3) 調査と提言などで協力

ERIA、JETRO、IDE、JICA、ITI、日本アセアンセンター

経済連携への協力

RCEP構築への協力

東アジアのFTAとアジア太平洋のFTA の連結

日本の成長と市場開放

専門労働や留学生、観光客の相互受け入れ

より対等な相互の協力へ

1973年からの40年以上の友好協力関係

更に日本はASEANとより緊密な関係を築いていくべきである。

3232

まとめ(1)ASEANの50年と経済統合

ASEANでは、AECに向けて着実に行動がとられてきた ①ASEAN域内経済協力は、着実な成果を上げてきた ②生産ネットワーク構築の支援も行ってきた ③東アジアの経済統合においてもASEANが中心となっ

てきた

統合への遠心力を抱えながらも、現代世界経済の下での発展のために、AECの確立と統合の深化が不可避

東アジアの経済統合においてイニシアチブを握り続けることも肝要

2015年末を通過点に、更にAECの深化へ

3333

まとめ(2)ASEANの50年と経済統合

ASEANは現代の経済統合の最重要な例 グローバル化を続ける世界経済の中でAEC

創設 世界の成長センターの東アジアで経済統合

を牽引

世界金融危機後の変化は、世界経済におけるASEANの重要性を増すとともに、AECの実現を追い立てる

34

まとめ(3)ASEANと日本

ASEANと東アジアは、日本にとっても最重要地域

政治経済的にASEANとの関係強化が不可欠

日本企業にとっても最重要な生産基地・市場

日本はASEANと共に発展を

日本は、ASEANとの協力を強化しなければならない

AEC実現へ向けての協力も重要

RCEPやTPPなどのメガFTA構築を推進していかなければならない

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(参考)トランプショックとASEAN―アメリカのTPP離脱の影響ー

東アジアではASEANが経済統合をリード

世界経済の構造変化の中で経済統合を推進

1992年からAFTA推進、2015年末にAEC創設。

東アジア地域経済協力も牽引:RCEPを提案・推進

世界金融危機後にTPPが大きなインパクト

アメリカが参加。日本も参加。高い貿易自由化と新ルール。

2015年10月TPPが大筋合意、2016年2月署名。

しかし2016年11月にトランプ氏が大統領当選。

トランプ大統領就任とアメリカのTPP離脱は、ASEANにどのような影響を与えるか?

36

TPPとASEAN経済統合(1)トランプ大統領以前の状況

TPPはASEAN経済統合を加速し追い立てる

TPPが東アジアの経済統合(RCEP)の実現を追い立てそれがASEAN統合を追い立てる

TPP交渉進展の下で、ASEANがRCEPを提案・推進

ASEANは自らの経済統合を他に先駆けて進めなければならない。同時に東アジアの地域協力枠組みにおいてイニシアチブを確保しなければならない:域内経済協力政策から。

TPP規定がASEAN経済統合を深化させる可能性

マレーシアやベトナムの政府調達や国有企業の例

原産地規則等も。

37

TPPとASEAN経済統合(2)トランプ大統領以後の状況

トランプ氏当選以後にTPPからの撤退表明。 1月にトランプ大統領就任、TPPから撤退との大統領令。

ASEAN経済統合を追い立てる力が弱くなる。

TPPがRCEP交渉を促す力が弱くなり、RCEPがAECを追い立てる力も弱くなる。 東アジア各国がRCEPを推進する圧力を減じる。

RCEPを質の高いFTAとする圧力を減じる。

TPPの幾つかの規定がAECを深化させる可能性が低くなる。 AECの政府調達規定等を促す可能性は低くなる。

原産地規則等に影響する可能性も低くなる。

38

TPPとASEAN各国(1)トランプ大統領以前の状況

参加各国に大きな利益の期待

自由貿易の利益やアメリカ向け輸出の促進(アメリカとのFTA)、巨大なサプライチェーンへの参加、投資の増加、国内改革、安全保障にも良い影響

マレーシア:アメリカ向け輸出拡大、投資増の期待。国内改革も期待。政府調達が問題だったが、ブミプトラ政策は多くの面で維持。

ベトナム:アメリカ向け輸出(縫製品)の拡大、投資の増加、国有企業改革、安全保障に関連する関係強化も期待。「ヤーン・フォワード」ルールが問題だったが、条件緩和。発効前の投資も増加。

不参加各国へは大きな負の影響の予想

大筋合意後に参加への関心表明:タイ、インドネシア、フィリピン。

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TPPとASEAN各国(2)トランプ大統領以後の状況

トランプ氏の大統領選当選とTPPからの撤退表明。

参加各国:TPPが発効しなければ利益を得ることは不可能。

マレーシアやベトナム:TPP参加による多くの利益を得ることは不可能。発効以前の投資が逃避の可能性も。

不参加各国:不参加各国にとっては、これまで想定されたデメリットを回避できることを意味。

タイ・ソムキット副首相「 タイの立場としてはTPPが頓挫した方がメリットは大きいだろう」

ただしデメリットの回避とは簡単には言えない。

TPPが頓挫、あるいはトランプ大統領になって世界経済が保護主義的になることは、ASEAN経済全体に大きな負の影響。

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まとめ(1):トランプショックとASEAN TPPはASEANと東アジアの経済統合を追い立ててきた。

アメリカがTPPから撤退すると、その統合推進に負の影響。

ASEAN各国にも負の影響。

1月にトランプ大統領就任、TPPから撤退との大統領令に署名。またNAFTA再交渉、(多国間ではなく)2国間の貿易交渉へ。

TPPが頓挫し、アメリカと各国が保護主義化する可能性。

TPPが進まない現在の状況の中で、ASEANとRCEPはより重要となる。

AECは東アジアで最も深化した経済統合。

RCEPは成長を続ける東アジアのメガFTA:ASEANが牽引。

東アジアでは、中国が進める「一帯一路」も進められている。

41

まとめ(2)日本の役割:トランプショックとASEAN 日本はメガFTAを進め、世界全体での貿易自由化と通商ルー

ル化を進めなければならない。

ASEANと連携して、RCEPの実現へ向けて進むべきである。

できるだけTPPの実現に向けて進めて行くべきである。

2017年4月に日本はTPP11を進めることを表明。

5月21日TPP閣僚会議:早期発効に向けた選択肢を検討し、その作業を11月のAPEC首脳会議までに終える。

11月の大筋合意へ向けて交渉を進める。

TPP11と同時に、RCEP交渉と日本・EUのEPA交渉を進め、世界経済の貿易自由化を担保、保護主義へ対抗しなければならない。

42

ご清聴ありがとうございました

本報告の参考文献石川幸一・清水一史・助川成也編『ASEAN経済共同体の創設と

日本』文眞堂、2016年11月。石川幸一・朽木昭文・清水一史編『現代ASEAN経済論』文眞堂、

2015年9月。清水一史「トランプショックとASEAN経済統合」、『世界経済評論』

2017年9・10月号(「特集 ASEAN新時代」)、2017年8月。