Post on 25-Mar-2020
1、極力人間の手を加えず、トマト本来の自然な姿で栽培する。
2、設備はU字支柱とネットにマルチのみ、設備投資を大きく削減(右の画像参照)。
3、株間は80cm~100cm、条間、畝間は220cmとゆったり栽培。
4、露地で放任に近い形で栽培するため、誘引や芽かき・交配作業が軽減できる。
5、葉の繁茂量も根も多くなるので、乾燥に強く、裂果や尻腐れの発生も少ない。
6、病害虫の発生も少ないため、農薬の散布量も減り、より安全な青果を供給できる。
7、1株から2m以上の枝が20~30本出る大樹に育ち、多少の雨が降っても
果実の味にあまり影響を与えない。
上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
高冷地
一般地
*遅霜に当たらない定植時期になるように播種を調整する。
*排水性が良く肥沃な土壌を選ぶ
*一般地で7月、高冷地で8月に収穫のピークを迎える。
*長期収穫を目指すために、収穫開始から1ケ月毎に通路に追肥を行う。
*黄化葉巻病が蔓延している産地では栽培しない。
*土壌病害(青枯れ・半身萎ちょう病など)の発生状況などを考慮し
接ぎ木の有無を検討する。
*通常のトマト栽培とは異なり、『わき芽』は取らないで放任することで
省力できる。そうする事で、大雨後でも玉割れが少なくなる。
*株元の風通しと日当たりを良くするため、第2果房までの『わき芽』は
見つけ次第、早めに摘む(右の画像を参照)。
*主枝、わき芽は地面に付かないように誘引する(病害虫の発生の抑止)。
収量実績※
トン/10a
※収量実績はあくまで目安であり、保証するものではありません。※3姉妹以外のソバージュ栽培に適性を持つ品種は、下記に記載。いずれも3姉妹に比べると収量は落ちるので、予めご了承ください。ピッコラカナリア(3.5トン/10a)、プリンセスロゼ(4トン/10a)、トスカーナバイオレット(4トン/10a)、プチポンロッソ(1トン/10a)以上の4品種をソバージュ栽培する際にも、本手引きをご活用ください。※記載の収量実績は2013年パイオニアエコサイエンス、宇都宮研究農場で実施の収量調査結果に基づく。
3月栽培地
2月
5トン
5トン
4.5トン10
6 調理
度
ソバージュ栽培とは
強 強中生
g
プラム
生食調理
6 調理
レッド40~60
レッド
サンマル
10~15
早生
極早生
中 強20~30
シシリアンルージュ
ロッソナポリタン
熟期品種
中 長
長
サンマルツァーノリゼルバ
強
中
果形 果色草勢 輪紋病節間
プラム レッド長 強強
【 ソバージュ栽培の特徴 】
ソバージュ栽培暦(表-1)
【栽培の要点】
10月7月6月4月 8月 9月
播種 定植 収穫
用途果重 糖度灰カビ
【ソバージュ栽培における品種の特性 】(表-2)
5月
露地や雨よけで、野性的(ソバージュ)に育てる栽培方法を、わたし達は“ソバージュ栽培”と呼んでいます。美肌トマト3姉妹(サンマルツァーノリゼルバ・シシリアンルージュ・ロッソナポリタン)は特にソバージュ栽培に適性のあるトマトです。
1.圃場の選定と定植
【圃場の選定】
1、畝は南北に立て日当たりと風通し、排水の良い場所を選ぶ。
2、土壌病害を回避する為にも、接木苗を利用する。
3、全ての病害虫に抵抗性を持つ台木の品種はないので、まず栽培圃場がどのような病害虫に侵害されて
いるかを認識しておく。(青枯病、半身萎凋病、萎凋病レース1、レース2、、ネコブセンチュウなど)
【定植準備】
1、基本的には、元肥を多めにして、肥効の緩やかな追肥や葉面散布で樹勢をコントロールし栽培する。
2、定植1~2週間前に元肥を散布して耕うんする。ただし乾燥している場合は、充分に潅水してからマルチを
張る。(雨上がりの土壌水分が充分にある時に行うのが良い。)
3、定植5~7日前に畝立て、マルチを張り地温の上昇を図る。(地温15℃以上を保持する。)
4、定植前日までには支柱を設置し、ネット張りを済ませておく。
支柱は、暴風、豪雨に耐えられるよう、筋違や足場パイプを付けて頑丈に作る。(別紙図3-1、図3-2参照)
通路幅を広くして風通しを良くすると葉の枯れや病気が少なくなるので必ず2m以上のスペースをとる。
(表-3) (kg/10a成分量)
成分 元肥 追肥 総量
N 17 3~5 20~22
P 20 3~5 23~25
K 15 3~5 18~20
【定植】風による損傷を防ぐためにも定植後すみやかにテープナーや麻ひもで誘引し、主枝を固定する。
ソバージュ栽培風景
ソバージュ栽培の手引き
オススメ資材 葉面散布に弊社の 『ダッシュMEネオ 1000倍』、 『アーキア酵素むげん 1000倍』
を定期的に散布することをお薦め
します。(光合成を活発にし、樹勢
を回復させることにより、病害の
発生を招きにくくする為)
2.圃場管理と収穫作業
【仕立て方と芽かき】
1、1~2段花房 (草丈50cmくらい)までは脇芽をとり、株元の風通しをよくする。
2、草丈50cmから上部は放任栽培で芽かきを行わない。
3、誘引は基本的に放任とするが葉が混んだ場合や垂れ下がってきた時は、テープナー等でネットに固定
したり、風通しや日当たりを遮断する枝はマイカ線で固定する。
【追肥】
1、追肥は、第5花房の開花時期以降から始め、樹勢をみながら実施する。
2、1回当たりの追肥量は、窒素(N)成分で3~5kg/10aとし通路に散布する。
肥効の急なものは望ましくない。(例:尿素や硫安など)
3、定植後2~3ヶ月後に収穫のピークを迎えるので、その前に葉面散布や追肥をしっかり行う。
【樹勢の強弱の判断】
樹勢が強い場合 (図-1) 樹勢が弱い場合 (図-2)
【収穫】1、原則として朝の涼しい時間帯(場合によっては気温の下がった夕方)に行い、収穫後も涼しい場所に置く。
2、収穫ピーク時期を過ぎると、老化が始まり枯れ葉が目立つようになる。また、灰色カビ病等にもかかりやすくなるので、
葉面散布等で樹にスタミナを付け生育促進に努める。
3、夜温が25℃以上になる熱帯夜が続くと、食味、糖度が落ちるので、一般地では7月までに収穫のピークを
迎えられるように作付する。
【裂果】
1、収穫初めは降雨の影響で裂果するが、脇芽が伸びて樹が大きくなると雨が降っても裂果しにくくなる。
2、夜温が10℃以下になると、果実に朝露が付き裂果が増えるのでそれまでに収穫ピークを迎えられる様に作付する。
【病害虫防除】
1、使用する薬剤はJA,販売店に相談して使用事項を厳守する。
2、土壌病害・ウィルス等にかかった株は、発見次第抜き取り圃場の外に出して処分する。
※茎が太く、生長点付近がカール
しているのは樹勢が強すぎるので
摘葉するか、整枝にて対応する。
また、追肥は控える。
※葉が細く、花柄も細く着果しないな
ど樹勢が弱い時は追肥、潅水を行う。
栽培品種各項目の数値
は反当たりサンマツァーノ
リゼルバミニトマト 大玉トマト
場所 栃木 北海道 熊本栽培方法 ソバージュ 単棟ハウス 連棟ハウス栽培期間 6ヶ月間 8ヶ月間 11ヶ月間
用途 調理 生食 生食単価/1kg ¥300 ¥529 ¥221総収量(kg) 5,000 4,086 12,283
売上総額 ¥1,500,000 ¥2,161,494 ¥2,714,543
出荷経費 選果料/KG ¥0 ¥0 ¥50選果料総額 ¥0 ¥0 ¥614,150
4KG箱、パック ¥75,000 ¥169,365 ¥199,599運賃(5円/1kg) ¥25,000 ¥20,430 ¥61,415市場手数料(売上の8%) ¥120,000 ¥172,920 ¥217,163JA単協手数料(売上の3%) ¥45,000 ¥64,845 ¥81,436JA全農手数料(売上の0.5%) ¥7,500 ¥10,807 ¥13,573出荷経費合計 ¥272,500 ¥438,367 ¥1,187,336
生産費 苗代 ¥33,000 ¥43,000 ¥65,000農薬代 ¥8,000 ¥23,000 ¥84,000
農薬・肥料・ 肥料代 ¥38,000 ¥146,000 ¥160,000苗代・資材費 雇用労働費 ¥0 ¥366,000 ¥79,000
誘引資材その他 ¥30,000 ¥59,000 ¥46,000光熱費 ¥0 ¥38,000 ¥273,000
農機具、車両原価償却費 ¥20,000 ¥37,000 ¥47,000施設減価償却費 ¥30,000 ¥53,000 ¥64,000
その他 ¥4,000 ¥8,000 ¥48,000生産費 合計 ¥163,000 ¥773,000 ¥866,000
¥435,500 ¥1,211,367 ¥2,053,336¥1,064,500 ¥950,127 ¥661,207
244% 78% 32%
圃場準備(肥料、支柱、マルチ等) 作業時間 32 33 26
定植 作業時間 8 63 37
追肥 作業時間 2 1 5
育苗 作業時間 30 55 97
かん排水・保温換気 作業時間 0 25 31
病害虫防除 作業時間 4 27 31
管理作業 作業時間 0 324 443
収穫 作業時間 250 418 304
出荷 パッキング 作業時間 60 114 62
後かたずけ その他 作業時間 16 22 20
作業時間合計 402 1,082 1,056
作業日数(8時間 ×2人) 25 68 66
作業労務費合計 ¥321,600 ¥865,600 ¥844,800
¥742,900 ¥84,527 (¥183,593)
※サンマルツァーノリゼルバの収量は弊社試験農場の収量調査に基づく。※対象の大玉・ミニは独立行政法人統計センターの「平成19年産品目別経営統計」を参照。※大玉・ミニの出荷経費の選果料、運賃、市場手数料、農協手数料は、弊社による農協組合員からの聞き取り調査に基づく。※比率・数値は品種や対象により異なります。※天候・販売形態等により数値の変動はありえます。※上記の比較はあくまで過去の実績に基づく試算であり、収入を保証するものではありません。
労務費(時給800円)
営業利益(農家所得-労務費)
ソバージュ栽培(露地放任)と施設栽培の反当たり収益性比較例
経費合計(出荷経費 + 生産費)農家所得(売上‐経費合計)
経営効率指標(農家所得÷経費)
経営効率指標は大玉(熊本)に比べ7倍、ミニ(北海道)に比べ3倍効率的。
施設栽培に比べて確実に導入と継続の費用負担が軽い!初年度50万円前後、2年目以降は資材を再利用できるので20万円以下!(初年度は支柱代が30万円程度かかる。10年で償却を想定。)
交配・温度管理・摘果は必要なく、定植・芽かき・整枝・誘引が大幅に省力化。作業時間は全体で60%も短縮でき労務費も抑えられる。
施設栽培では農家所得から労務費を差し引くと赤字になる事例も珍しくありません。一方、サンマルツァーノリゼルバのソバージュ栽培ではきちんと利益を確保。大玉(熊本)に比べ92万円、ミニ(北海道)に比べ65万円の増収となった。
サンマルツァーノリゼルバは選果料はゼロですみます。調理用なのでヘタ無し収穫で歩留まり向上。業務筋への流通への出荷を想定して、本試算ではSMRに二つ折りレシピ代は含みません。
ソバージュはきちんと防除をしても ハウスに比べ農薬の散布量もかなり少なめですみます。
ソバージュの農家所得は大玉(熊本)に比べ160%、ミニ(北海道)に比べ112%と高い。
ソバージュ栽培は反当たりの定植本数が400~500本と通常の施設栽培の1/4なので反当たりの収量はハウス栽培に比べて決して高くありません。
【結論】ソバージュ栽培は施設栽培に比べ経費負担が圧倒的に軽く、売上が低い場合でも利益を確保しやすい。本試算では他社大玉に対して92万円、他社ミニ対しても65万円の増収となった。