年7 月号 NOTICIAS日系社会シニアボランティア 泉 安佐...

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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2015 7 月号 ■NOTICIAS■ 国際協力機構アルゼンチン事務所 ■NOTICIAS■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 01 プロジェクト便り 草の根技術協力 「生物資源の持続可能な利用による地域住民の生計向上支援計画」 ―プロジェクト「ラ・エストレージャ(星)」― 一般財団法人 自然環境研究センター プロジェクト現地責任者 藤園大悟 02 ボランティア便り 「アルゼンチン日系社会の日本語教育の課題と今後に向けて」 泉安佐 日系社会シニアボランティア(職種:日系日本語学校教師) 03 日系研修員便り 「日系研修生としての日本での経験」 2014年度 日系長期研修員 足立スサナ(研修科目「栄養管理学」) 04 JICA 事務所の動き 一般財団法人 自然環境研究センター 藤園大悟 プロジェクト現地責任者 現在、私は、アルゼンチンの北東部フォルモーサ州で地域の自然資源の持続的利用をテーマとした JICA 草の根技術協力プロジェクト「自然資源の持続的利用による地域住民の生計向上支援」(プロジェクト 「ラ・エストレージャ(星)」)で活動してい ます。 このプロジェクトは、一般財団法人 自然 環境研究センターが、アルゼンチン側の実施 機関で長年に亘り生物資源管理に関する活 動を行っているアルゼンチン生物多様性財 団(NGO)をカウンターパートとして、2012 年 5 月から 5 年間の予定で実施しているもの で、今年で 4 年目を迎えました。同州のほぼ 中心に位置し、先住民や貧困住民人口の多い ラス・ロミータス(Las Lomitas)市近辺で 草の根技術協力「生物資源の持続可能な利用による地域住民の生計向上支援計画」 ―プロジェクト「ラ・エストレージャ()」―

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    2015年 7月号 ■NOTICIAS■ 国際協力機構アルゼンチン事務所 ■NOTICIAS■

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    01 プロジェクト便り

    草の根技術協力

    「生物資源の持続可能な利用による地域住民の生計向上支援計画」

    ―プロジェクト「ラ・エストレージャ(星)」―

    一般財団法人 自然環境研究センター プロジェクト現地責任者 藤園大悟

    02 ボランティア便り

    「アルゼンチン日系社会の日本語教育の課題と今後に向けて」

    泉安佐 日系社会シニアボランティア(職種:日系日本語学校教師)

    03 日系研修員便り

    「日系研修生としての日本での経験」

    2014年度 日系長期研修員 足立スサナ(研修科目「栄養管理学」)

    04 JICA 事務所の動き

    一般財団法人 自然環境研究センター

    藤園大悟

    プロジェクト現地責任者

    現在、私は、アルゼンチンの北東部フォルモーサ州で地域の自然資源の持続的利用をテーマとした JICA

    草の根技術協力プロジェクト「自然資源の持続的利用による地域住民の生計向上支援」(プロジェクト

    「ラ・エストレージャ(星)」)で活動してい

    ます。

    このプロジェクトは、一般財団法人 自然

    環境研究センターが、アルゼンチン側の実施

    機関で長年に亘り生物資源管理に関する活

    動を行っているアルゼンチン生物多様性財

    団(NGO)をカウンターパートとして、2012

    年 5月から 5年間の予定で実施しているもの

    で、今年で 4年目を迎えました。同州のほぼ

    中心に位置し、先住民や貧困住民人口の多い

    ラス・ロミータス(Las Lomitas)市近辺で

    草の根技術協力「生物資源の持続可能な利用による地域住民の生計向上支援計画」 ―プロジェクト「ラ・エストレージャ(星)」―

  • の持続可能な生物資源の利用による生態系保全が主な活動の内容です。

    フォルモーサ州には、アンデス山脈を水源とし、満水時には、その

    広さが 40万 ha にもなる「エストレージャ湿地」という南米で 3番目に

    大きな湿地があります。プロジェクトでは、エストレージャ湿地を主

    な活動地域とし、①生物資源としてのイエロー・アナコンダ(Eunectes

    notaeus)の持続的利用、②アルゼンチン北東部地域に生育する高木パ

    ロ・サント(Bulnesia sarmientoi;緑檀)の持続的利用、③地域でのエ

    コツーリズムの推進を主な活動のテーマとしています。

    イエロー・アナコンダの皮革は高価であり、ヨーロッパを中心に服

    飾品用に輸出されています。プロジェクトでは、イエロー・アナコン

    ダの皮革の持続的利用を推進するため、アルゼンチン生物多様性財団

    と協力し、イエロー・アナコンダに発信機をとり付け、その追跡調査を実施しています。地域住民と共に

    イエロー・アナコンダを捕獲して体長や体重等を調査し、その結果から行動範囲、成長変化等の情報収集

    を行う等、今後の個体数管理や皮革輸出のための基礎データ収集を行っています。

    アルゼンチン北東部地域の固有種であるパロ・サントに関

    する活動では、地域の製材所から出る製材後のパロ・サント

    廃材を利用し、地元大学と共に廃材より芳香性のある有用な

    アロマ・オイルの抽出実験を行っています。今後は、パロ・

    サントの苗木植林や本邦や現地企業とも連携した地域特産

    のパロ・サントの商品開発に繋がるような活動の展開をも視

    野に入れています。

    また、フォルモーサ州には、エストレージャ湿地をはじめ、

    未だに手付かずの自然環 境や固有の動植物が残されています。本プロジェクトでは、これらの自然資源を

    壊すことなく間接的に活用し、地域に収入をもたらす方法として、エコツーリズムの推進を支援していま

    す。具体的には、ラス・ロミータス市役所やアルゼンチン生物多様性財団と協力し、日本からの一般・学

    生ツーリストの受入れを行い、エストレージャ湿地での

    自然観察や周辺の村落を訪問し、住民との交流を通じて

    地域の生活習慣や文化紹介を行っています。

    上記の 3つの活動を軸とし、アルゼンチン北東部地域

    やフォルモーサ州に残された貴重な生物資源の持続可

    能な利用のため、私たちは、地域住民と共に活動に取り

    組んでいます。地域住民に自然資源が生活向上の糧にな

    ることを実感してもらい、固有の自然環境を守りながら

    生活向上を図るという好適サイクルの構築を目指し、今

    後も協力活動を推進していきたいと思います。

  • 日系社会シニアボランティア 泉 安佐

    配属先:在亜日本語教育連合会

    職種:日系日本語学校教師

    私は、日系日本語学校教師として在亜日本語教育連合会(教連)に所属し、この 2 年間、同連盟加盟校

    21 校を順次巡回し、適宜、現場に有効であろうと考える助言を行ってきました。巡回先の学校は、大き

    く「①日系の子供達が中心の日本語学校」と「②非日系の成人が中心の日本語学校」に分かれます。ここ

    では、「①日系の子供達が中心の日本語学校」の現状と今後の課題について述べたいと思います。

    現在、日系子弟中心の日本語学校は、全国に 10校程あり、多くの学校が生徒の減少、日本語力の低下、

    教師不足、複式授業、教師の指導力等々の問題を抱えて

    います。生徒の減少や日本語力の低下は、学習者が既に

    3 世、4 世の時代に入り、日系人としてのアイデンティ

    ティや日本語学習の必要性が希薄になっているためで

    す。教師不足は、日本語が堪能な人が減少していること

    も要因ですが、学校は土曜日のみの開校が多く、これだ

    けでは先生方は生活できないというのも大きな理由で

    す。教師が少なければ当然、複式クラスにもなります。

    さらに日本語が話せるというだけで日本語教師を依頼

    され、教え方が分からないまま、モチベーションの低い

    子供達に教える、といった状況も散見されます。

    このようなことを書くと救いがないようですが、学校現場は、結構明るい印象を受けます。日本文化や

    それに類した日本的行事が多いからかもしれません。教室で見た寡黙な生徒が卓球大会で闘争心を燃え立

    たせている姿、或いは、歌祭りで堂々と演歌を熱唱している姿は驚きに値します。日系という枠組みに括

    られている子供達ですが、何をしていいかわからず思春期をやり過ごす日本の多くの子供達よりは、ずっ

    と幸せに思えるのです。

    以上、問題を抱えながらも日本語学校に通う子供達の

    ために、先生をはじめ関係者の方々は、試行錯誤しなが

    ら努力を重ねている、というのが私の日本語学校巡回で

    の印象です。今後もこの現実と向き合いながら、より居

    心地のよい学びの場にしていくことは、誰もが望むこと

    だと思います。では、どうしたらいいのか、と少し考え

    てみました。

    まずは、保護者と学校と先生方が、今ある日本語学校

    の様々な問題を共有し、話し合い、よりよい教育環境を

    作り上げていくことだと思います。学力低下ややる気の無さを学校や先生方だけの問題にしないというこ

    と。そのための一つの提案としては、学校は、カリキュラムを作成し、保護者に提示することです。子供

    達の日本語力をどこまで伸ばし、どこに連れて行くのか、といった学校の方向性を指し示すことです。そ

    アルゼンチン日系社会の日本語教育の課題と今後に向けて

  • して、その目標に向かうには、まず、親御さんたちの協力が不可欠であることを理解していただくことが

    重要だと思います。三者が一体にならなければ問題は何も改善されません。次に、先生方には快適にお仕

    事をして頂きたいと思っています。それには先生方の生活をある程度保証することです。先生の仕事は、

    授業時間内だけでは終わりません。授業準備も必要ですし、研鑽も積まねばなりません。とにかく良い授

    業をして頂かなくてはならないのです。現職の多くの先生方は子供が好き、教えるのが好き、また、子供

    達に日本語や日本文化を継承させたいという使命感に似た気持ちがあります。そんな先生方に、これから

    も日本語学校を盛り立てていって頂きたい。そのためには、それに見合う保証がなされるべきだと思うの

    です。

    他にも現在の教育環境をより良くしていく策は種々あるでしょうが、まずは子供達が楽しく日本語を学

    び、日本文化に慣れ親しんでいく、そういった日本語学校の環境作りを、保護者、学校、先生方が一体と

    なって考え、取り組んでいって頂きたいと思うのです。

    2014 年度 日系長期研修「栄養管理学」

    足立スサナ

    ENS No.6、V. L. y Planes TSG 卒業

    今日、調理学と言われる分野では、調理に関する技術や食材を上手に扱う方

    法、人のもてなし方、経済的な側面等を集中的に学習します。

    近年、生活習慣病が増えている一つの要因は、食習慣が乱れていることであ

    り、肥満、高血圧、メタボリック・シンドローム等は、他の様々な病気に繋が

    っています。私は、栄養管理学の研修に参加することで、食と健康に関する知

    識を深めるため、健康に良い料理について勉強することをかねてより希望していました。

    私の研修は、主に北海道にある酪農学園大学の管理栄養士コースの講義や研修担当者の教授のゼミを中

    心に組まれ、栄養学に関する学会、講習会、セミナー、「食」関連の地域イベント等にも出席しました。

    また、研修旅行を通じて京都の食文化の歴史を学び、精進料理や千四百年の伝統的な餅焼き屋で餅とお茶

    を味わう機会を得た他、京料理展示と包丁儀式等に参加する機会も頂きました。研修で学んだものは、主

    に健康に繋がる料理と食習慣、専門用語、日本食の特徴、歴史、食材、基礎的な料理技術等でした。

    他の中南米諸国の日系研修員と共に JICA 札幌に滞在している間、興味深く、また、素晴らしいと思っ

    たのは、1 世や日系 2 世、3 世であっても、白いご飯、梅干し、味噌汁、寿司、うどん、そば等を食し、

    そして、真夏の正月に汗をかきながら雑煮を食べることを日系研修員の仲間の皆が経験していることでし

    日系研修生としての日本での経験

  • た。好き嫌いは別にし、「食」は文化的にも強い影響を与えていることがよく分かり、日系社会の一つの

    繋がりだと思いました。こうした「食文化」に対する考えも 10 ヶ月の間に祖国の中南米の料理を懐かし

    く思う気持ちが強まることで、より深く考えるようにな

    りました。

    研修期間中は、日本の人々にアルゼンチンを紹介する

    機会があり、大学内では、調理学の授業の中でフード・

    コーデイネーターと共に学生を対象に食文化の紹介と料

    理の実習をしました。また、日本の中学校や高校におい

    てもアルゼンチンという国について紹介した他、インタ

    ーネット・テレビやラジオでもアルゼンチンの話をさせ

    て頂きました。

    さらには、北海道民族学会では、アルゼンチンで一般

    的に広まった寿司の形態と日本の寿司との違いについて話をさせて頂きました。(概要は、「Hokkaido

    Journal of Ethnology」4月号に掲載)。

    研修期間中に知り合ったモンゴル、カザフスタン、ミャンマー、モザンビークやザンビア等の他の国々

    から来た仲間を通じ、様々な国の食習慣も知ることができました。こうした仲間との交流を通じ、ヨーロ

    ッパの影響を強く受けた「アルゼンチンの食文化」について考え、また、ユネスコの世界無形文化遺産と

    して認められた和食について考え、食料生産と市場流通の重要性、健康との関係、QOL(*)を改善するた

    めの栄養等について考察を深めていくと、「食」というものは、様々な分野(社会、文化、医学、経済学、

    農学等)が総合的にヒトに関わっていることが分かります。

    (*) QOL(Quality of Life)は、『生活の質』と訳され、人間ら

    しく、満足して生活しているかを評価する概念

    これからも調理学、食材の流通、日本で学んだ健康的

    な料理について学び続けると同時に、これを普及し、こ

    れらに関した教育に従事できればと考えています。

    JICAと酪農学園大学に対し、この研修機会を与えてい

    ただいたことを深く感謝します。

    どうも有難うございました。

    6 月 28 日:シニア海外ボランティア 1名(長期 花き栽培)離任

    6 月 30 日:日系社会ボランティア 2 名(シニア 1名 ソーシャルワーカー、青年 1名 野球)、シニア海

    外ボランティア 2 名(長期 1名 環境教育、短期 1名 マーケティング)着任

    7 月 3 日:日系社会シニアボランティア 1名(職種:文化)離任

    7 月 20 日:日系社会青年ボランティア 1名(職種:野球)離任

    8 月 3~14日:第三国研修「中南米における天然植物資源を用いた観賞植物の育種」の実施

  • 2015 年 7月-141号

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