I 実証分析 -...

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81 第3実証分析 概要 Bass モデルと中心とした普及モデルによる実証分析と予測 第Ⅵ章および、これ以降の第Ⅶ章から第Ⅸ章では、第Ⅲ章で説明した Bass モデル Bass(1969) モデル)を用いて、日本のアナログテレビ(カラーテレビ)の普及過程を分 析する 1 。また、その分析データを利用して、アナログテレビとデジタルテレビ双方の普 及状況について将来予測をおこなう。分析に使用するモデルは、「初回購入モデル」、「加 購 入モ デ ル 」、「 置 換 購入 モ デ ル」、 お よ びア ナ ロ グテ レ ビ とデ ジ タ ル テレ ビ の 世代 交 代 を説明する「世代交代モデル」である。分析期間は、モデルにより若干異なるが、おおむ 1960 年代中半から 2002 年までの約 35~40 年間である。また、将来予測の期間は、デ ジタルテレビについては 2003~2015 年の 12 年間、アナログテレビについては 2025 年ま での 22 年間である。 以下、第Ⅵ章では「初回購入モデル」によるカラーテレビの普及状況の分析と将来予測 を、第Ⅶ章では「加購入モデル」による分析と予測を、第Ⅷ章では「置換購入モデル」 による分析と予測を、そして、第Ⅸ章では、「世代交代モデル」によるアナログテレビと デジタルテレビの普及状況の分析と予測おこなう。 1 デジタルテレビが登場する前のテレビは、もっぱらカラーテレビのことをさす。本稿では、「デジタルテレ ビ」との対比において「アナログテレビ」のをもちいるが、それ以外のケースでは、「アナログテレビ」を 単に「テレビ」もしくは「カラーテレビ」と呼ぶこともある。

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Page 1: I 実証分析 - osaka-gu.ac.jp...ね1960年代中半から2002年までの約35~40年間である。また、将来予測の期間は、デ ジタルテレビについては2003~2015年の12年間、アナログテレビについては2025年ま

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第3  実証分析

概要

Bassモデルと中心とした普及モデルによる実証分析と予測

 第Ⅵ章および、これ以降の第Ⅶ章から第Ⅸ章では、第Ⅲ章で説明した Bass モデル

(Bass(1969)モデル)を用いて、日本のアナログテレビ(カラーテレビ)の普及過程を分

析する1。また、その分析データを利用して、アナログテレビとデジタルテレビ双方の普

及状況について将来予測をおこなう。分析に使用するモデルは、「初回購入モデル」、「

加購入モデル」、「置換購入モデル」、およびアナログテレビとデジタルテレビの世代交代

を説明する「世代交代モデル」である。分析期間は、モデルにより若干異なるが、おおむ

ね 1960 年代中半から 2002 年までの約 35~40 年間である。また、将来予測の期間は、デ

ジタルテレビについては 2003~2015 年の 12 年間、アナログテレビについては 2025 年ま

での 22年間である。

 以下、第Ⅵ章では「初回購入モデル」によるカラーテレビの普及状況の分析と将来予測

を、第Ⅶ章では「 加購入モデル」による分析と予測を、第Ⅷ章では「置換購入モデル」

による分析と予測を、そして、第Ⅸ章では、「世代交代モデル」によるアナログテレビと

デジタルテレビの普及状況の分析と予測おこなう。

1 デジタルテレビが登場する前のテレビは、もっぱらカラーテレビのことをさす。本稿では、「デジタルテレビ」との対比において「アナログテレビ」の をもちいるが、それ以外のケースでは、「アナログテレビ」を

単に「テレビ」もしくは「カラーテレビ」と呼ぶこともある。

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第3  実証分析

第Ⅵ章 カラーテレビ受信機の普及分析1

    ~初回購入モデルによる推定と将来予測~

 Bass モデルは、一般に家庭向け 化製品など耐久消費財の新製品の普及を説明するた

めのモデルで、初めてその製品を購入(「初回購入」)する消費者の消費行動を分析するの

に適している。同モデルの構造は、第Ⅲ章で説明したように 常に簡潔であり、第Ⅳ章で

のべた Bass モデルの改良型モデルのような、現実経済に存在する複 な影 を考慮しな

いシンプルなモデルである2。

 本章では Bass モデルにより、日本のカラーテレビの普及過程を3つの基礎的な購入行

動である、「初回購入」、「 加購入」、および「置換購入」のうち、最も基礎的な「購入理

由区分」である「初回購入」について分析する3。そして、「初回購入」による普及過程が、

同モデルによってかなりうまく説明できることを実証する。

 分析対象は、カラーテレビを保有していない購入者(世帯)が、それを初めて購入する

ときの普及状況を示すデータ(「カラーテレビ初回購入数データ」)である。本分析の第 1

の目的として、「初回購入モデル」がどの程度うまく「カラーテレビ初回購入数データ」

を説明できるかを確認する。そして、第 2 の目的として、そこで得られた分析データを用

いて将来のカラーテレビの普及数の予測をおこなう。

 以下、第 6.1 節では、「初回購入」の概念について説明する。第 6.2 節では、「初回購入

モデル」の考察をおこない、第 6.3 節では、本節で使用するデータの使用方法に関する注

意を説明する。また、第 6.4 節では「初回購入モデル」による分析方法について、第 6.5

節~6.6 節では分析結果とその検証結果について説明する。最後に第 6.7 節では、それら

分析結果をもちいてカラーテレビの「初回購入」による普及数の将来予測値を算出する。

6.1節 初回購入の定義

 第Ⅳ章でも説明したように、「初回購入」とは、ある世帯が当該製品を初めて購入する

ことをいう。したがって、世帯が当該製品を現在保有していて今回の購入分が2台目や3

台目にあたる場合(「 加購入」)や、当該既存製品を捨ててその代替品を購入する場合(「置

換購入」とは明らかに区別される。

 初めて購入するとは、同種の製品やそれに準ずる製品を今まで保有していないこという。

2 現実経済に存在する複 な影 とは、製品価格、購入世帯の所得水準、テレビの場合についてはデジタルテ

レビ等後継機種の存在、アナログ放送の打ち切り等アナログ・カラーテレビに される使用期限等の制約、等

のことを指す。3 購入理由区分については、第Ⅳ章参照。

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したがって、 似の製品を保有している場合も初回購入にはあたらない。たとえば、すで

にカラーテレビを保有している人(世帯)がそれに加えて、BS チューナー付きのテレビ

やビデオデッキ付きのテレビを購入する場合である。これらの製品は付加的な機能はある

ものの、テレビ本体の機能は基本的には同一のため、全くの「新製品の購入」とはいえな

い。当然、これらの製品の購入者(購入世帯)の行動は既存のカラーテレビの影 を受け

るので、本「初回購入」モデルだけでは、その普及状況は分析できないとものと思われる。

したがって、これらの製品の購入の際は、何らかのモデルの改良が必要であろう4。

 本稿では、本章第 3 節「データの説明」にて詳しく説明するが、カラーテレビの「初回

購入数」のデータを使用するにあたっては、以下のような、いくつかの仮定を けて運用

する。

 まず、本稿では、「初回購入」は「世帯単位」で把握する。つまり、当該製品を購入す

るのは、世帯構成員である個人ではなく世帯である。したがって、当該製品を現在保有し

ている世帯の構成員が、たとえ彼にとって初めての購入であったとしても、当該製品と同

種の製品を購入したばあい、「初回購入」には含めない。

 また、「初回購入」は同様に、当該製品を現在保有している世帯の構成員が、転出・転

入・死亡・誕生、等により変化したとしても、影 を受けない。すなわち、当該「世帯」

が一個の家系として存続する限り一度限りしかおこらないと仮定する。したがって、「初

回購入」をおこなうことができる「世帯」は、当該製品を一度のも買ったことのない世帯

か、もしくは、ある「世帯構成員」が、たとえ当該製品を保有する「世帯」に所属した経

験があっても、その「世帯」から転出してあたらしい「世帯」を作った場合に限られる。

 なお、本稿では、このような 算の基礎である世帯数をネットで 算する。すなわち、

社会全体において、後継者がなく加齢、等による理由で消滅する世帯数と、上記のような

世帯構成員の一 が転出して新 「世帯」を創成する数とを、相殺しカウントする。この

ような、 算方法では、各世帯ごとの購入行動の動 は把握できないものの、社会全体と

して、どれだけの(「初回購入」分の)カラーテレビが保有されているかを知ることがで

きる。当然ではあるが、当該製品の普及状況について研究するのであれば、「初回購入」

分の把握であっても、後者の 算方法で十分であろう。

6.2節 「初回購入モデル」の説明

 Bass モデルは耐久消費財の普及過程のうち「初回購入」 要による普及を説明するモ

デルである。したがって、同モデルを「初回購入モデル」として分析に用いる場合には、

特別な仮定をおいたり、モデルを拡張する必要はなく、Bass による理論モデルそのまま

4 BSチューナー付きテレビは、通常のテレビと比べて大きな機能の差がないので、テレビと区別して普及分析をおこなうことは難しいかもしれない。一方、ビデオデッキ付きテレビは、ビデオデッキとしての機能をもつ

ので、ビデオデッキとの相乗効果を勘案した普及モデルが必要になるかもしれない。

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推定に使用することが可能である5。

 第Ⅲ章では、Bass モデルの一般的な理論、性 、および仮定・制約について説明した

が、本節では、図 6.2.①と以下に示す理論式(式 6.2.①~⑩)にしたがって、もう少しく

わしく「初回購入モデル」としての Bassモデルの説明をおこなう6。

A. 理論式による説明

 図 6.2.①は、Bass モデルによる製品の普及状況のうち「初回購入数」を決定するメカニ

ズムを示したものである。これを、以下理論式をもちいて順に説明する。

① まず、最初の式 6.2.①は Bass モデル全体の概要を示している。本モデルでは、第 t

期の「初回購入数(

n n[ ] (t))」は、「先導的影 のパラメーター(

r pn[ ])」、「 随的影

のパラメーター(

r fn[ ])」、第 t-1 期における「累積初回購入数(

N n[ ] (t -1))」、「初

回購入潜在市場 模(

M n[ ])」により決定されるものと考える。

   

n n[ ] (t) = f r pn[ ] ,r f

n[ ] ,N n[ ] (t -1),M n[ ]( )               (6.2.①)7

ここで、「初回購入数(

n n[ ] (t))」とは、消費者が当期にはじめて当該製品を購入

した数を示し、「累積初回購入数(

N n[ ] (t -1))」とは、消費者が新製品の当初発売時

期から前期までに、はじめて当該製品を購入した累積総数である8。「先導購入のパ

ラメーター(

r pn[ ])」とは、広告、等マスメディアによる製品情報の伝達の影 を

示し、「 随購入のパラメーター(

r fn[ ])」とは、既購入者(世帯)による未購入者

(世帯)への製品情報の伝達の影 を示す。また、「初回購入潜在市場 模(

M n[ ])」

とは、将来当該製品を初めて購入するであろうと考えられる潜在的購入者の数で

ある。ただし、各変数間の関係はつぎのとおりである。

② 「累積初回購入数(

N n[ ] (t))」は、「前期の累積購入数(

N n[ ] (t -1))」に「当期の初

回購入数(

n n[ ] (t))」を加えたものである(6.2.②式)。

   

N n[ ] (t) = N n[ ] (t -1) + n n[ ] (t)                  (6.2.②)

③ また、「初回購入数(

n n[ ] (t))」は、「先導購入数(

n pn[ ] (t))」と「 随購入数(

n fn[ ] (t))」

から構成される(6.2.③式)。

   

n n[ ] (t) = n pn[ ] (t) + n f

n[ ] (t)                    (6.2.③)

 前者は、広告、等マスメディアによる製品情報である「先導的影 」により製

品を購入した数であり、後者は他の既購入者(世帯)による製品情報である「

5 第 6.1 節でのべた、「初回購入数データ」使用上の仮定は除く。6 Bass モデルの基本的な理論、性 、および仮定・制約、等については、第Ⅲ章を参照。7 以下では、関数記号(

f )を「一般的な関数関係の存在」を示すために使用している。通例のように、特定の関数関係を固定して考える用法ではない。したがって、本来は

f1、

f2のように区別して使用される場合に

ついても、同一記号

f を適用している。8 本分析での累積初回購入数(

N n[ ] (t -1))は、実際には、初回購入数データのデータ期間の最初から前期までの累積総数をさす。

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随的影 」により製品を購入した数である。

④ 「先導購入数(

n pn[ ] (t))」は「先導購入のパラメーター(

r pn[ ])」と「初回購入残存

潜在市場 模(

M n[ ] - N n[ ] (t -1))」により決定され(6.2.④式)、「 随購入数(

n fn[ ] (t))」

は、「 随購入のパラメーター(

r fn[ ])」、「潜在市場 模にしめる前期までの累積初

回購入数の比率(

N n[ ] (t -1) M n[ ] )」、および「初回購入残存潜在市場 模

M n[ ] - N n[ ] (t -1))」の3者の影 を受ける(6.2.⑤式)。なお、

N n[ ] (t -1) M n[ ] の比

率は、それが大きくなれば「 随購入数(

n fn[ ] (t))」への影 力が増加するので、「既

購入者の製品購入圧力(既購入者のプレッシャー)」と呼ぶこともできる。

   

n pn[ ] (t) = f r p

n[ ] ,N n[ ] (t -1),M n[ ]( ) = f r pn[ ] , M n[ ] - N n[ ] (t -1)( )[ ]       (6.2.④)

   

n fn[ ] (t) = f r f

n[ ] ,N n[ ] (t -1),M n[ ]( ) = f r fn[ ] , N n[ ] (t -1) M n[ ]( ), M n[ ] - N n[ ] (t -1)( )[ ](6.2.⑤)

ここで、当期以降に初回製品購入をおこなう消費者の数、すなわち「初回購入

残存潜在市場 模(

M n[ ] - N n[ ] (t -1))」は、「初回製品購入」をおこなう消費者全体

の数である「初回購入潜在市場 模(

M n[ ])」から前期までに既に「初回製品購入」

をおこなった消費者の数、「累積初回購入数(

N n[ ] (t -1))」を差し引いたものである

ので、

M n[ ] - N n[ ] (t -1)であらわされる。また、まだ製品を購入していない未購入者

に対する「既購入者の製品購入圧力」の程度は、「初回購入潜在市場 模(

M n[ ])」

全体に占める既購入者(「累積初回購入数(

N n[ ] (t -1))」)の割合(

N n[ ] (t -1) M n[ ])

に比例すると考える9。

⑤ したがって、以上より理論式 6.2.⑥式を導くことができ、Bass モデルは同式第2行

目の右辺第1項と第2項の要素により成り立つことが理 できる。

  

n n[ ] (t) = n pn[ ] (t) + n f

n[ ] (t)

    

= f r pn[ ] , M n[ ] - N n[ ] (t -1)( )[ ] + f r f

n[ ] , N n[ ] (t -1) M n[ ]( ), M n[ ] - N n[ ] (t -1)( )[ ](6.2.⑥)

B. 推定式の説明:

 上記 A. 「理論式による説明」では、変数間の因果関係から構成した式 6.2.⑥を導出

した。本節では、同式をもとに関数形について以下の仮定を加え推定式を構築する。その

内容は、次のとおりである。

① 「先導購入数(

n pn[ ] (t))」は、「当期の潜在市場 模(

M n[ ] - N n[ ] (t -1))」のある一定割

合(

r pn[ ])をしめる(6.2.⑦)。

9 本節では、6.2.⑤式の

N n[ ] (t -1) M n[ ]は、

N n[ ] (t -1)と

M n[ ]が比例関係あるという Bass モデルの仮定をそ

のまま踏 している。比例関係にない場合については、第Ⅲ章を参照。

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n pn[ ] (t) = r p

n[ ] * M n[ ] - N n[ ] (t -1)( )[ ]                   (6.2.⑦)

② 一方、「 随購入者数(

n fn[ ] (t))」は、同じく「当期の潜在市場 模(

M n[ ] - N n[ ] (t -1))」

のある割合(

r fn[ ])をしめるが、その割合の比例係数は、係数(

r fn[ ])と「潜在市場

模にしめる前期の累積初回購入数の比率(

N n[ ] (t -1) M n[ ])」との積であるものとする(式

6.2.⑧)。

   

n fn[ ] (t) = r f

n[ ] * N n[ ] (t -1) M n[ ]( ) * M n[ ] - N n[ ] (t -1)( )[ ]           (6.2.⑧)

 すなわち、新 購入が進むことにより「潜在市場 模にしめる累積初回購入数の比

率(

N n[ ] (t -1) M n[ ])」は上昇し、未購入者に対する既購入者からの内的な初回購入圧力

(未購入者にとって「 随的影 」)が まるのである。

③ したがって、理論式 6.2.⑥は、つぎのような推定式 6.2.⑨に書き直すことができる。

本推定式は、Bass(1969)で用いられた推定式と同一のものである。ただし、本章の推定

作業では、「市場 模(

M n[ ])」に時系列データ(

M n[ ] (t))を用いるケースや、「市場

模のパラメーター(

m n[ ])」を使用するケースを想定している10。したがって、本節の以

下の 分では、推定式 6.2.⑩も用いて推定作業をおこなうことにする。

   

n n[ ] (t) = r pn[ ] + r f

n[ ] * N n[ ] (t -1) M n[ ] (t)( )[ ] * M n[ ] (t) - N n[ ] (t -1)( )       (6.2.⑨)

   

n n[ ] (t) = r pn[ ] + r f

n[ ] * N n[ ] (t -1) m n[ ] * M n[ ] (t)( )[ ][ ] * m n[ ] * M n[ ] (t)( ) - N n[ ] (t -1)[ ] (6.2.⑩)

6.3節 初回購入モデルのデータ

 本分析に使用するデータは、推定のための A.カラーテレビ初回購入数、B.世帯数、お

よび、これらに加え予測のための C.世帯数将来推 、の 3 種 である。これらのデータ

のデータソースや加工方法については、いずれも第Ⅴ章の「加工・作成データ」で既に説

明している。したがって、本節では、これらデータの使用方法について 説する。

A. 「カラーテレビ初回購入数」(カラーテレビの各年初回購入数、および累積初回購入

数)(図 5.2.A.①、図 5.2.A.②)

 データ記号:各年初回購入数 CTVDIFNO(

n n[ ] (t))、累積初回購入数 C-CTVDIFNO

      (

N n[ ] (t))

 データ期間:1966年~2002年

 データ単位:各年購入数 台/年、累積購入数 台

10 「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」については、6.4 節参照。

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 データの説明:第Ⅴ章で説明したように、本データは、カラーテレビの普及率をもとに

加工・作成した購入数データである。本データの実 的内容として、各年購入数はカラー

テレビを 1 台以上保有する世帯数の 1 年間の増加(減少)数(保有世帯数の純増減)を、

累積購入数はその世帯数(保有世帯数)をあらわしている。

 そもそも、カラーテレビの「初回購入数」を表すデータは日本では入手することができ

ないが、その状況は海外でも同じようである。Bass(1969)では、耐久消費財の販売データ

を、新発売から 10 年程度の期間でもちいて分析をおこなっている。これは一般に、新製

品の発売直後の期間では、「初回購入」 要がほとんどを占め、分析の障害となる「 加

購入」 要や「置換購入」 要による購入数がデータに混入する割合がそれ以降の期間に

比べ少ないからである。Bass(1969)による分析期間は 1920~60 年頃までであったが、この

時代の耐久消費財の普及速度は現在に比べて緩やかであったのかもしれない。しかし、現

在では過去と比 して、情報化の影 より製品の普及速度は速まり、消費生活の変化によ

って 加購入や置換購入への 要インパクトは増加している。また、製品のライフ・サイ

クル自体も以前にくらべ短縮化しているだろう。したがって、「初回購入モデル」による

分析に利用できるデータ期間はますます縮小しており、製品の種 によっては、このよう

な無加工の販売データでは有効な分析ができないおそれがある。

 そこで、本分析では、以下に説明する仮定を加えることにより、カラーテレビの普及世

帯」およびその純増数のデータをカラーテレビの「累積初回購入数」および「初回購入数」

のデータであると考え、データ期間のすべてにわたって「初回購入モデル」の適用が可能

となるように加工する。

 本分析では、まず最初に、カラーテレビは購入するまえは別として、いったんそれを購

入し保有する世帯にとって、毎日のように使用する、いわば生活必 品になると仮定する。

そこで、カラーテレビは故障しても、すぐに修理されるか新品に買い換えられて、そのま

ま翌期まで放置されることはないと考える。

 さらにこれを、修理分を除いて簡略化すると、当期に世帯全体によって購入されるカラ

ーテレビの台数は、

   「当期購入数」=「当期初回購入数」+「当期 加購入数」

                  -「当期廃棄数」+「当期置換購入数」

   (ただし、「当期廃棄数」=「当期置換購入数」)          (6.3.①)

の関係で表される11。これは、「初回購入数」だけではなく「 加購入数」およびその両

方の購入分から生ずる「廃棄数」と「置換購入数」を含んだ一般的な式である。

 ここで、本データは、「世帯普及率データ」(上限は 100%)を基に作成されているので、

1 世帯あたり 2 台以上購入(「 加購入」)がおこなわれた場合でもデータには全く反映さ

れない。したがって、本データを、6.3.①式に当てはめた場合、「当期購入数」は「当期

11 「初回購入数」、「 加購入数」、および「置換購入数」の定義については、第Ⅳ章参照。

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初回購入数」と初回購入分に係わる「当期廃棄数」および「当期置換購入数」の合 数で

ある 12。さらに、上記式の仮定により、「廃棄数」=「置換購入数」であるので、結局本

データは、初めてカラーテレビを購入する世帯の純増数、すなわち「初回購入数

(CTVDIFNO)」を表すものと見なすことができる。また同様に、本年純増(純減)数を

算出する前のカラーテレビの保有世帯数の推移は、カラーテレビの「累積初回購入数(C-

CVDIFNO)」ととらえることができる。

 このように、普及率ベースのデータを「初回購入」による購入数であると仮定したばあ

いには、世帯の世代交代の問題を考慮する必要がある。世帯の構成員に寿命がある限り、

分析対象期間が 期間(たとえば 37 年間)にわたれば、その最終年に存在している世帯

の構成員は最初の年の世帯構成員とは異なるはずである。そして、「このような異なる構

成員からなる世帯の時系列データが、本当に「初回購入」による製品の購入数をあらわし

ているのか」、との疑問に答える必要がある。本節では、この問題をつぎのように考える。

分析対象期間の世帯の初代の構成員が何らかの理由により死去したばあい、その世帯は彼

らの後継者(通常は子孫)により引き継がれる。その世帯は、製品の使用経験を継承して

いるので、もはや「未購入者」ではないと考えられ、分析期間中にもう2度と「初回購入」

をおこなうことはない。初代の世帯構成員が購入した製品は分析対象期間中に故障等によ

り廃棄されるが、本分析の仮定による即座に買い換えられる。そして、買い換えられた製

品台数は分析対象から除外される。

 なお、分析期間中に「初回購入」をおこなう世帯は2種 に分 できる。第1は、製品

を使用した経験のない全くの「初回購入」世帯であり、第2は、以前製品を所有する世帯

に属していたが、その世帯を継承せず独立した世帯である。Bass モデルの仮定では、製

品に関する使用情報(「 随的影 」に属する)は、すべての潜在的購入者に対して均一

に影 すると仮定している。しかし、上記のように「初回購入」世帯から独立した「独立

世帯」の構成員は、彼らが元の世帯に属していたときの使用経験に基づいて製品の購入を

判断することは明白であり、「 随的影 」は現実には均一ではない。しかし、本稿では、

簡略化のためこの点についての考慮は省略し、全ての「初回購入」の対象世帯が当該製品

の使用経験を持たないものと仮定して分析をおこなう。

B. 「世帯数」(図 5.2.B.①)

 データ記号:SETAI3(

M n[ ] (t))

 データ期間:1955年~2002年

 データの単位:世帯

 データの説明:第Ⅴ章の説明のとおり、世帯数の実績値を示すデータである。カラーテ

12 本データは、「 加購入数」およびそれに係わる「廃棄数」および「置換購入数」を含まない。

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レビのように普及率が い製品では、製品の普及数が世帯数と い相関を示している(図

6.3.①)。両者の相関係数は 0.932(1%水準で有意)である。これは、世帯数がカラーテ

レビの「市場 模」をあらわすのに、最も有効な単位のひとつであると考えられることを

意味している。本分析では、「初回購入モデル」の「市場 模の変数(

M n[ ] (t))」に、1966

年、1975 年、1985 年、2002 年および各年の「世帯数データ(SETAI3)」をあてはめて分

析し、モデルのフィットの変化を確認する。

C. 「世帯数将来推 」(図 5.2.B.②)

 記号:SETAI5(

M n[ ] (t))

 データ作成期間:1955年~2025年(1955年~2002年までは実績値)

 データの単位:世帯/年

 データの説明:第Ⅴ章の説明のとおり、世帯数の将来の予測値を示すデータである。第

6.7 節の「将来予測」では、「初回購入モデル」の「市場 模の変数(

M n[ ] (t))」に本デー

タ値をあてはめて、2025年までのカラーテレビの初回購入台数の予測をおこなう。

6.4節 初回購入モデルによる分析方法

 本分析の推定作業に、主として 線形回帰分析をもちいる。 線形回帰分析に用いる

量分析ソフトは、SPSS 11.5J for Windows Base Systemおよび同 Regression Modelsである。

SPSS 11.5Jの 線形回帰分析プログラムでは、分析画面のモデル式欄に 線形推定式をそ

のまま入力するだけで、複 な 線形回帰分析の 算を実行することができる。

 一方、Bass(1969)では、第 6.2 節の式 6.2.⑨を線形化し最小二乗法法により回帰分析を

おこなっている13。この方法では、 線形回帰分析の欠点である、適切な初期値を 定し

なければ真の値が得られない問題や、推定パラメーターの信頼度を示す数値が十分に得ら

れない問題を回避し、より信頼できる推定結果を示すことができる。しかし、Bass モデ

ルのような単純なものではなく、より複 な推定式や線形化できない推定式を用いて分析

をおこなう際には、 線形回帰分析用パッケージによる推定方法を利用するほか方策がな

い。

 したがって、本稿では、複数のモデルに同一の推定方法を適用し結果を比 するため、

特に断らない限り、推定作業には 線形回帰分析をもちいる。しかし、もとより可能なも

のについては、 線形分析による推定結果のチェックを兼ねて、線形回帰分析も併せて実

行する。また、その他の分析方法も必要に応じて使用する。

A. 基本的な分析方法と分析目的

13 当時はまだ、 線形推定をおこなうための装置が一般に普及していなかった。

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90

 本分析では、第 6.2節で説明した「初回購入モデル」(式 6.2.⑩)を用いて、6.3.Aの「カ

ラーテレビ初回購入数データ(CTVDIFNO)」を 線形回帰分析により推定する。また、

線形変換が可能なモデルについては線形回帰分析も使用する14。

  線形回帰分析では、6.2.⑩式を直接 線形 量分析プログラムに適用し、データをイ

ンプットして推定値を求める。なお、分析期間や市場 模の 定は、以下の B.分析期間、

C.市場 模の 定で説明する。

 線形回帰分析を使用するためには、前節の式 6.2.⑨を展開して式 6.4.①のようにパラメ

ーターに対して一次式になるように変換する必要がある。そのためには、市場 模(

M n[ ] (t)

をデータとしてモデル式に包含させることはできない。市場 模は、分析期間中は一定と

仮定した上で、パラメーターとして推定する方策をとる必要がある。

したがって、これ以降線形回帰分析にもちいる市場 模(

M n[ ] (t))は、パラメーター(

m n[ ])

とあらわす。

   

n n[ ] (t) = r pn[ ] * m n[ ][ ] + r f

n[ ] - r pn[ ]( ) * N n[ ] (t -1)[ ] - r f

n[ ] m n[ ]( ) * N n[ ]2 (t -1)[ ]    (6.4.①)

 つぎに、同式のに含まれるパラメーターを、

r pn[ ] * m n[ ] )( ) = a 、

r fn[ ] - r p

n[ ]( ) = b 、

- r fn[ ] m n[ ]( ) = g、とおいた式 6.4.②をもちいて、線形回帰分析(OLS)により推定する15。

   

n n[ ] (t) = a + b * N n[ ] (t -1) - g * N n[ ]2 (t -1)                (6.4.③)

α、β、γが求まれば、パラメーター

m n[ ]、

r pn[ ]、

r fn[ ]は、式 6.4.④~6.4.⑥により 算す

ることができる。

   

m n[ ] = -b ± b 2 - 4ag( ) 2g                     (6.4.④)

   

r pn[ ] = a m n[ ]                           (6.4.⑤)

   

r fn[ ] = -m n[ ] * g                           (6.4.⑥)

 この分析方法は、第Ⅲ章の Bass モデルによるパラメーター推定方法で述べたものと、

基本的には同じである。分析期間は以下の B.分析期間にて説明するが、市場 模の 定

については、上述のように市場 模は自動的に市場 模のパラメーター(

m n[ ])として求

められるので、 線形分析のように独自のデータを使用して推定することはできない。

 最後に、上記 線形回帰分析および線形回帰分析により得られた分析値(自由度調整済

決定係数

R2、

t値、

F値)により、データへのモデルのフィット(当てはまりのよさ)と

推定係数の信頼度を確認する。 線形推定の場合は、いずれも線形推定における定義を準

14 線形式への変換が可能なモデルとは、本節 C.で説明する市場 模のパラメーター(

m n[ ])を使用しないモ

デルをいう。表 6.5.①では、テスト NO.A17、A28、A9 である。15 線形回帰分析に用いる 量分析ソフトは、SPSS 11.5J for Windows Base Systemである。ただし、一 MS ExcelX for Mac を使用することもある。

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用する。また、 線形分析ソフトではこれら適切な分析値が表示されないので、以下のよ

うに適宜 算して求める。これら一連の作業により、「初回購入数データ(CTVDIFNO)」

に対する「初回購入モデル」の説明力の強さを確認する。なお、 線形回帰分析と線形回

帰分析の両方を実施したモデルについては、それらの分析結果の整合性を比 する。

● 「 線形分析の場合の分析値の 算方法」

  線形分析の場合の分析値は以下の式により 算している。各分析値は線形推定の際の

定義を 線形分析に準用したものであり、いわば「相当値」である。なお、使用する記号

はつぎのとおりである。

 

R 2:決定定数、n:サンプル数、k:変数の数、

ˆ a :回帰係数の推定値、

AS ˆ a :回帰係数

の推定値

ˆ a の漸 標準誤差(Asymptotic Standard Error)、DF:自由度。

 ①自由度修正済み決定係数:

R2

= 1- n -1( ) n - k -1( )[ ] * 1- R 2( )

 ②F 値:

F = R 2 1- R 2( )[ ] * n - k -1( ) k[ ]

 ③t 値:

t = ˆ a AS ˆ a

 ④P 値:

P = TDIST ˆ a ,DF,2( )、(MS Excel のスチューデント t 分布の確率の関数式で記載)

B. 分析期間

 本分析では、モデルとデータとの適否から生ずる推定結果の変動を調べるために、分析

期間を①1966 年~1975 年(10 年間)、②1966 年~1985 年(20 年間)、および③1966 年~

2002 年(37 年間)の 3 期間に 定する。この分析期間の 定は、 線形分析・線形分析

とも共通である。なお、分析期間をこの 3期間に 定する理由はつぎのとおりである16。

 上記 6.3.A.において、「カラーテレビ初回購入数データ(CTVDIFNO)」は、カラーテレ

ビの普及率をもとに作成されたことを説明した。そして、本データは、故障等により当期

に廃棄されるカラーテレビの数(「廃棄数」)とその廃棄分を再購入する数(「置換数」)が

等しいという仮定のもとに、カラーテレビを初めて購入する世帯の数、すなわち「カラー

テレビ初回購入数」に等しいと想定した。

 したがって、このような仮定が正しければ、「カラーテレビ初回購入数データ

(CTVDIFNO)」を適切な「初回購入モデル」で分析した場合、データ期間の 短にかか

わらず いフィットが得られると期待できるはずである。一方、「カラーテレビ販売デー

タ(CTVSALESNO:第Ⅷ章参照)」など、「 加購入数」や「置換購入数」を含む可能性

のあるデータを「初回購入モデル」で分析した場合、このような結果は期待できない。お

そらく、その分析結果は、「初回購入数」がそのほとんどをしめる最初の数年間(製品発

16 分析期間の さについては、カラーテレビの耐用年数がおおむね 10年間であることから、まず 10年の期間を区切って分析する。20 年間はその倍の期間であり、37年間はその残りの期間を意味している。

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売後の数年間)の期間では良好なモデル・フィットが確認されるが、「 加購入数」や「置

換購入数」を含むそれ以降の期間では、モデル説明力は前者よりも低下するであろう。

 本分析では、 さの違う複数の分析期間を 定することにより、分析期間の 短に限ら

ず、初回購入モデルが初回購入データをうまく説明できることも、あわせて検証する。期

待される結果は、上記①、②、③、のすべてに期間で等しく いフィットが得られること

である。

 なお、前節でもふれたように、Bass(1969)では、上記後者の例のデータ(製品の「販売

データ」)を使用している。しかし、同論文では、「初回購入数」に対して「置換購入数」

が問題にならない新製品の導入直後の期間に限定して分析をおこなっている17。しかし、

第Ⅲ章で指摘したように、分析期間を限定した場合、その期間が十分 ければよいが、短

い場合はサンプル数の点で 量分析の作業上問題が生ずる可能性がある。

C. 市場 模の 定

 第Ⅲ章でもふれたように、Bass モデルによる製品の普及分析や普及予測をおこなうに

は、正確な製品普及データ準備するだけではなく、分析対象製品の適切な「市場 模(

M)」

をモデルに 定することが不可欠である。

 本分析の 線形回帰分析では、「初回購入の市場 模(

M n[ ] (t))」に、①分析期間初年

の「市場 模(SETAI.66)」、②③④分析期間最終年の「市場 模(SETAI.75、SETAI.85、

SETAI.02)」、および⑤分析期間各年の「市場 模(SETAI)」、の 5 種 の市場 模データ

を用いて推定作業をおこなう1819。また、⑥分析期間最終年の「市場 模」と⑦分析期間

各年の「市場 模」に「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」を乗じたモデルでも推定作業

をおこない、 7種 の「市場 模データ」を分析する20。なお、この「市場 模のパラ

17 Bass(1969)では、分析期間を製品の耐久性、故障率、および買換サイクルを示すデータに基づき決定している。同論文による分析期間は製品によって異なるが、1960 年代以前の 10 年~20 年程度となっており、今日われわれが考える耐久消費財の買換サイクルよりは、若干 いように感じられる。なお、同論文では、「 加購

入数」について考慮していない。しかし、分析対象となる製品の性 や当時のアメリカにおけるそれら製品の

普及状況を考慮すれば、2~3 代目の 要である「 加購入数」を考慮する必要がなかったのかもしれない。18 「市場 模の記号(SETAI)」の後ろの2桁の数字は、西暦の下2桁をしめす。たとえば、SETAI75は、1975年の「市場 模」(世帯数)のことである。

19 「初回購入モデル」の「市場 模(

M n[ ] (t))」に、①分析期間初年の「市場 模」を採用するのは適切と

は思えない。本分析であえてこのデータを用いてテストするのは、不適切な「市場 模」をモデルに 定した

際には、きわめて悪いフィットしか得られないことを確認するためである。20 「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」を使用するモデルでは、「初回購入の市場 模(

M n[ ] (t))」に分析期間最終年の「市場 模」データを使用する。この理由はつぎのとおり。Bass モデルを 線形分析した場合、①

「初回購入の市場 模(

M n[ ] (t))」に適正な範囲の「市場 模」データを使用しないと、誤ったパラメーター

の値が表示され場合がある。②「初回購入の市場 模(

M n[ ] (t))」を使用せず、「市場 模のパラメーター

m n[ ])」のみで推定した場合も同様、誤ったパラメーター値が表示される。③適正な範囲の「市場 模」デ

ータを使用した場合は、「初回購入の市場 模(

M n[ ] (t))」の値に係わりなく、同じ正しい推定値がえられる。したがって、「初回購入の市場 模(

M n[ ] (t))」には、最も真の「市場 模」に いと予想される、分析期間

最終年の「市場 模」データを使用する。

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メーター(

m n[ ])」を使用する意味は、真の「潜在市場 模」が「市場 模(

M n[ ] (t))」と

して 定した「世帯数データ」そのものではなく、そのデータにある比率(

m n[ ])を乗じ

たもの、(

m n[ ] * M n[ ] (t))である場合を想定しているからである21。

 このように、本分析の第 2 の目的として、いろいろな「市場 模(

M n[ ] (t))」のもとで

「初回購入モデル」の「初回購入数データ(CTVDIFNO)」へのフィットを 測し、現状

で最も適切と考えられる「市場 模」を推定する。そして、有効な分析値が得られた場合

には、そのテストの「先導購入のパラメーター(

r p

n[ ]

)」、「 随購入のパラメーター(

r f

n[ ]

)」、

および「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」の各値を記 し、次項で説明するカラーテレ

ビ「初回購入」の将来予測に利用する。

 本分析の期待される結果は、上記③「分析期間各年の市場 模(

M n[ ] (t) =

SETAI)」、も

しくはそれに「市場 模のパラメーター(

m n[ ] )を乗じたケース(

m * M n[ ] (t) 、

M n[ ] (t) =

SETAI)」で、最良の結果が得られることである。それは、これまでにも述べたよ

うに、カラーテレビのような普及率の い製品の初回購入数は、世帯数との連動性がきわ

めて く、Bass モデルにおける市場 模データとして利用するのに適していると考えら

れるからである。

 一方、本分析の線形回帰分析では、上記 A. 「基本的な分析方法と分析目的」で述べ

たように、初回購入の市場 模(

M n[ ] (t))は市場 模のパラメーター(

m n[ ])として単独

でのみ推定可能である。したがって、 線形分析のように、任意の市場 模データ

M n[ ] (t))を 定したり、市場 模データ(

M n[ ] (t))に市場 模のパラメーター(

m n[ ])

を乗じたものをもちいて分析することはできない。したがって、線形分析場合の市場 模

は、市場 模のパラメーター(

m n[ ])を使用するケースの 1種 だけである。

 なお、Bass(1969)では、市場 模の 定について、適切な市場 模(定数:

M)を 定

するか、もしくは市場 模自体をパラメーター(

m)として推定する方法について 及し

ている22。しかし、いずれの方法についても、分析期間中の市場 模を一定と仮定する点

において、現実の経済状況と比べ正確性に劣るものと考えられる。

6.5節 初回購入モデルによる分析結果

A.  線形回帰分析の結果

 本分析の結果は、表 6.5.①に示されている。

 本分析結果の第 1のポイントは、以下に示している。

 分析期間を①1966年~1975年(10年間)、②1966年~1985年(20年間)、および③1966

21 ここでいう、市場 模のパラメーター(

m n[ ])は、市場 模のデータ(

M n[ ] (t))に乗じて「

m n[ ] * M n[ ] (t)」のかたちで使用する意味で、線形分析の際単独で使用する市場 模のパラメーター(

m n[ ])とは区別される。

22 市場 模をパラメーターとして推定する方法の利点と問題点については、第Ⅲ章を参照。

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年~2002 年(37 年間)の 3 期間すべてにおいて、「市場 模(

M n[ ] (t))」の変数として、

「各年の世帯数」に「市場 模のパラメーター」を乗じたケース(

m n[ ] * M n[ ] (t)、

M n[ ] (t) =

SETAI)が、以下に示すように自由度修正済み決定係数、

R2=0.92~0.95 と最も

いフィットを示した(表 6.5.②)。

表 6.5.② 分析期間別分析結果(ベストの結果)

 ついで、「市場 模(

M n[ ] (t))の変数」を、「各年の世帯数」としたケース(

M n[ ] (t) =

SETAI)

が、以下のように①、②、③の期間すべてにおいて、

R2=0.85~0.93 と上記のケースとと

もに いフィットを示した(テスト NO.A15、A25、A5)、(表 6.5.③)。

表 6.5.③ 分析期間別分析結果(セカンド・ベストの結果)

 「市場 模(

M n[ ] (t))」の変数を一定とした場合のなかでは、世帯数データに「市場

模のパラメーター」を乗じたケース(

m n[ ] * M n[ ] (t)、

M n[ ] (t) =

SETAI 75,

SETAI85,

SETAI 02)

が、

R2=0.39~0.94 とばらつきはあるものの、平均すれば比 的良好な結果を示した(テ

スト NO.A17、A28、A9)。特に A.17 は、

R2=0.94 と全テスト中 2 番目に いフィットを

示した。

 「市場 模(

M n[ ] (t))」の変数を一定とし、「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」を使用

しないケースでは、分析期間の最終年(1975 年、1985 年、2002 年)の世帯数データを採

用したケース(

M n[ ] (t) =

SETAI 75,

SETAI85,

SETAI 02)が、

R2=0.36~0.84 であった。(テス

ト NO.A12、A23、A4)。

 しかし、「市場 模(

M n[ ] (t))」の変数に、分析期間の最終年以外の世帯数データを使

用したケースでは、t 値または F 値で有意な結果が得られないか、自由度修正済み決定係

数(

R2)がマイナスの値を示したり、あるいは

R2=0.22~0.31 台と極端にフィットが低下

分析期間(年) テストno. サンプル数説明変数 自由度 F値 自由度修正済

n k DF パラメーター 推定値 漸 標準誤差 t値 P値 決定係数(R_2)

①1966~1975 A20 10 3 7 0.0256 0.0093 2.7610 0.0328 61.1114 0.9525

(10) 0.8392 0.0545 15.3885 0.0000

0.9044 0.0163 55.3303 0.0000

②1966~1985 A30 20 3 17 0.0334 0.0101 3.3187 0.0043 71.3281 0.9174

(20) 0.6888 0.0473 14.5617 0.0000

0.9856 0.0072 137.6536 0.0000

③1966~2002 A10 37 3 34 0.0340 0.0075 4.5216 0.0001 163.4924 0.9312

(37) 0.6748 0.0341 19.8118 0.0000

0.9936 0.0030 0.9936 0.0000

係  数

r pn[ ]

r fn[ ]

m n[ ]

r pn[ ]

r fn[ ]

m n[ ]

r pn[ ]

r fn[ ]

r pn[ ]

分析期間(年) テストno. サンプル数説明変数 自由度 F値 自由度修正済

n k DF パラメーター 推定値 漸 標準誤差 t値 P値 決定係数(R_2)

①1966~1975 A15 10 2 8 0.0348 0.0146 2.3771 0.0491 26.2089 0.8485

(10) 0.6609 0.0669 9.8785 0.0000

②1966~1985 A25 20 2 18 0.0361 0.0105 3.4474 0.0031 92.6905 0.9061

(20) 0.6459 0.0444 14.5546 0.0000

③1966~2002 A5 37 2 35 0.0363 0.0077 4.7138 0.0000 223.3167 0.9251

(37) 0.6431 0.0317 20.2904 0.0000

係  数

r pn[ ]

r fn[ ]

r pn[ ]

r fn[ ]

r pn[ ]

r fn[ ]

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し、良好な結果とならなかった(テスト NO. A11、A13、A14、A21、A22、A24、A1、A2、

A3)。

 以上の結果より、つぎの結論を導くことができる。

a. 「初回購入モデル」の「市場 模の変数」に各年の世帯数を採用した場合

M n[ ] (t) =

SETAI)、分析期間①1966年~1975年(10年間)、②1966年~1985年(20年間)、

および③1966 年~2002 年(37 年間)のすべてにおいて、 いフィットを確認することが

できた。したがって、カラーテレビの「初回購入」の普及分析には、「市場 模の変数

M n[ ] (t))」に各年の世帯数(

M n[ ] (t) =

SETAI)を採用するのが適切である。

b. 上記 a.の各年の世帯数に「市場 模のパラメーター」を乗じたケース(

m n[ ] * M n[ ] (t)、

M n[ ] (t) =

SETAI)では、「初回購入モデル」は「初回購入数データ」に対し、さらに いフ

ィットを示した。したがって、「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」は、各年の世帯数(SETAI)

と「真の市場 模」との差を埋めるデバイスとして、うまく機能しているものと思われる。

たとえば、上記テスト NO.A10における「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」は、

m n[ ] =0.9936

であった。これは、2002 年のカラーテレビの世帯普及率 99.3%に 似している。Bass モ

デルにおける「市場 模(

M n[ ])」は、それ以上普及が進まない「飽和市場 模(市場

模が時間により変化する場合(

M n[ ] (t))では、その時点の飽和市場 模)」を意味するの

で、分析期間③1966年~2002年(37年間)での「市場 模のパラメーター値」、

m n[ ] =0.9936

は、かなりリーゾナブルな値である。

c. 上記 a.および b.のケースでは、分析期間①1966年~1975年(10年間)、②1966年~1985

年(20 年間)、および③1966 年~2002 年(37 年間)の 3 期間でほぼ同レベルの いモデ

ル・フィットが得られた。したがって、今回使用した「初回購入数データ」は、カラーテ

レビの普及の初期段階に当たる①1966 年~1975年(10 年間)だけではなく、②1966 年~

1985 年(20 年間)、および③1966 年~2002 年(37 年間)でも、「 加購入数」や「置換

購入数」のデータがうまくフィルタリングされており、比 的純粋な「初回購入数」を示

している可能性が いことが確認できると思われる。

d. 市場 模(

M n[ ] (t))を「各年の世帯数(SETAI)」とせず、固定市場 模を選択したケ

ースでは、「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」なしの場合、分析期間の最終年の世帯数を

「市場 模」としたもの(テスト NO.A12、A23、A4)が、比 的よい結果を示した。逆

に、「市場 模(

M n[ ] (t))」に分析期間最終年以外の「市場 模」データを採用したもの

は、分析結果が有意にならないか、極端にフィットが悪化した。したがって、第Ⅲ節で述

べたように、本稿で採用する Bass モデルをベースにした普及モデルによる分析には、適

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切な市「場 模(

M n[ ] (t))」の 定が不可欠であることが再確認された。

e. 上記 d.と同じく、「市場 模(

M n[ ] (t))」を「各年の世帯数(SETAI)」とせず、固定市

場 模を選択したケースでは、「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」ありとなしのケース両

方で、テスト NO.A12 と A17(ともに期間①1966 年~1975 年)が、 いフィットを示し

た。しかし、このようなフィットのよさは、分析期間が期間②1966年~1985年(20年間)

や、期間③1966 年~2002 年(37 年間)では低下し、期間が くなればなるほど悪化する

ことが確認された。これには、つぎのような理由が考えられる。すなわち、分析期間が

いほど「市場 模」の変化(拡大)の影 が大きくなり、固定市場 模で分析した場合の

現実の「市場 模」との誤差が拡大する。また、分析期間が後になるほど、市場が飽和し

カラーテレビの普及数と世帯数との連動が強くなるため、その傾向は増幅される。一方、

期間①1966 年~1975 年では、カラーテレビの普及初期にあたり、市場が飽和に づくま

でに時間があったため、「市場 模」の変化(拡大)の影 による誤差が比 的軽微であ

ったものと思われる。

B. 線形回帰分析の結果

 本分析の結果は、以下のとおりである。なお、分析の詳細については 線形分析同様表

6.5.①に示されている。

 線形回帰分析は、 線形回帰分析と比 して分析方法が異なるだけである。したがって、

分析条件が同じであるなら同一の分析結果が得られるはずである。本線形回帰分析では、

分析に使用するデータは、カラーテレビの「初回購入数(

n n[ ] (t))」とカラーテレビの「累

積初回購入数(

N n[ ] (t))」のみであり、「市場 模(

M n[ ] (t))」は「市場 模のパラメータ

ー(

m n[ ])」として推定される。今回線形回帰分析をおこなった A32、A33、A31 と同じ分

析条件を持つ 線形回帰分析は、それぞれ A17、A28、A9 で、「市場 模(

M n[ ] (t))」は

「市場 模のパラメーター*分析期間最終期の市場 模(

m n[ ] (t) * M n[ ] (t))」、ただし

M n[ ] (t)=

SETAI 75、

SETAI85、

SETAI 02)である(表 6.5.④)。

表 6.5.④ 分析期間別線形分析結果(ベストの結果)

注)線形分析では直接

r pn[ ]、

r fn[ ]、

m n[ ]を推定するわけではないので、標準誤差、 t 値、および p 値はもとめ

られない。

分析期間(年) テストno. サンプル数説明変数 自由度 F値 自由度修正済

n k DF パラメーター 推定値 漸 標準誤差 t値 P値 決定係数(R_2)

①1966~1975 A32 10 3 7 0.0220 90.9310 0.9520

(10) 0.8140

29,103,158

②1966~1985 A33 20 3 17 0.0347 26.9120 0.7320

(20) 0.4657

36,469,170

③1966~2002 A31 37 3 34 0.0471 13.1030 0.4020

(37) 0.1601

44,392,327

係  数

r pn[ ]

r fn[ ]

r fn[ ]

r fn[ ]

r pn[ ]

r pn[ ]

m n[ ]

m n[ ]

m n[ ]

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97

 本線形分析結果をそれに相当する 6.5.①表の 線形分析結果(テスト NO.A17、A28、A9)

と比 すると、どのテストにおいても得られた推定値は、ほぼ一致することが確認できる。

また、

F値や

R2などの分析値もかなり い値が表示されている。

 本章冒頭でも述べたように、線形分析は 線形分析に比べて、パラメーターの初期値の

定の必要がなく、

F値や

R2等の分析値も容易にもとめられることから、その点では優

れた分析方法である。しかし、本分析での使い勝手で評価すれば、線形分析では「市場

模(

M n[ ] (t))」は「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」として推定される固定値であるため、

任意のデータを使用したり、任意のデータと他のパラメーターを組み合わせといったいろ

いろなケースのテストをおこなうことができない。実際、本分析では、 線形分析により

得られた推定値のうち、「市場 模」のデータを使用したテストによるものが、すべての

分析中で最もよい結果を示した(テスト NO.A05、A10、等)。したがって、これ以降の分

析では 線形分析によって得られた値を使用し、線形分析による結果は、参考値としての

利用にとどめることにする。

6.6節 「初回購入モデル」による分析結果の検証

 前節では、カラーテレビの「初回購入」データを「初回購入モデル」により 線形回帰

分析および線形回帰分析を実行した。本節では、前項の分析で得られた推定値を、モデル

式に当てはめて「初回購入数(

n n[ ] (t))」と「累積初回購入数(

N n[ ] (t))」を 算し、得ら

れたそれらの「 算値」を実際のデータ(「実績値」)と比 し、その精度をチェックする。

A. チェック方法

 ①実際の「初回購入データ」を使用せず前年の推定値を使用する方法

 この方法では、「初回購入モデル式」(式 6.1.⑨、6.1.⑩)に、「先導購入のパラメーター

r pn[ ])」、「 随購入のパラメーター(

r fn[ ])」、「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」、および

「市場 模のデータ(

M n[ ] (t))」を使用し、「初回購入数(

n n[ ] (t))」および「累積初回購

入数(

N n[ ] (t))」をもとめる。もとめられた 算値を、「初回購入数」および「累積初回購

入数」について実際のデータと比 し、その精度をチェックする。なお、「市場 模」の

データには、各期の世帯数(SETAI)を使用する。

 この方法では、「初回購入数」の実績データを全く使用しないため、第 1 年目の「初回

購入数」は、「市場 模(

M n[ ] (t))」に「先導購入のパラメーター(

r pn[ ])」を乗じた数、

すなわち、広告、等の「先導的影 」による購入者のみが発生する。ここでは既存の購入

者が存在しないため、「 随的影 」による「初回購入者」は発生しない。しかし、2 年

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目以降では、既購入者が累積的に増加し、既購入者からの「 随的影 」を受けた購入者

も加わることになる。したがって、2 年目以降では、「先導的影 」による購入者と「

随的影 」を受けた購入者の 2種 の購入者が存在する状況となる。

 本テストでは、以下に示す前項の分析でフィットが比 的よかったものを選んでチェッ

クする。

  期間①1966年~1975年(10年間):テスト NO.A12、A15、A17、A20

  期間②1966年~1985年(20年間):テスト NO.A23、A25、A28、A30

  期間③1966年~2002年(37年間):テスト NO.A5、A10

 ②実際の「初回購入データ」を使用する方法

 この方法では、「初回購入モデル式」(式 6.2.⑨、6.2.⑩)に、「先導購入のパラメーター

r pn[ ])」、「 随購入のパラメーター(

r fn[ ])」、「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」、および

「市場 模のデータ(

M n[ ] (t))」のほか、分析した期間の「初回購入数(

n n[ ] (t))」と「累

積初回購入数(

N n[ ] (t))」の実際のデータを使用し、残りの期間の「初回購入数」および

「累積初回購入数」をもとめる方法である。この方法では、分析期間(期間①1966年~1975

年、もしくは期間②1966 年~1985 年)は「初回購入数」および「累積初回購入数」に実

績データが使用されるので、それ以降の期間(期間①1976年~2002年、もしくは期間②1986

年~2002年)が 算期間(チェックすべき期間)となる。

 本テスト方法では、上記①同様以下に示す前項の分析でフィットが比 的よかったもの

を選んでチェックするが、期間③1966 年~2002 年(37 年間)は、全期間が分析対象であ

ったので、ここではチェックしない。したがって、チェックするテストはつぎのとおりで

ある。

  期間①1966年~1975年(10年間):テスト NO.A12、A15、A17、A20

  期間②1966年~1985年(20年間):テスト NO.A23、A25、A28、A30

 ③「初回購入データ」の使用数を増加させていく方法

 この方法では、上記②の方法のように、「初回購入モデル式」(式 6.2.⑨)に、「先導購

入のパラメーター(

r pn[ ])」、「 随購入のパラメーター(

r fn[ ])」、「市場 模のパラメータ

ー(

m n[ ])」、および「市場 模のデータ(

M n[ ] (t))」のほか、分析した期間の「初回購入

数(

n n[ ] (t))」および「累積初回購入数(

N n[ ] (t))」の実際のデータを使用する。しかし、

その「初回購入数」および「累積初回購入数」の実際のデータの使用数は、1 年目の 1 デ

ータのみ、1 年目から 2 年目までの 2 データ、1 年目から 3 年目までの 3 データ、の順で

10年目までの 10データを してゆき、その結果得られる 算精度の変化をしらべる。

 本テスト方法では、期間③1966 年~2002 年(37 年間)、テスト NO.A5 をもちいてテス

トする。

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B. チェック結果

 ①実際の「初回購入データ」を使用せず前年の推定値を使用する方法によるチェック結

果:

 実際の「初回購入データ」を使用せず前年の推定値を使用する方法による普及数 算結

果と普及数実績との比 結果は表 6.6.①および図 6.6.①に示す。同表では、各テストの普

及数 算結果を購入数、累積購入数、累積購入数の実績との差、同差比率の順に時系列で

表している。

 a. 普及末期の 算精度

 まず、各テストの 算値の精度を、分析期間の最終年(2002 年)の累積購入数の実績

値との差および、同差比率で比 してみる。

 期間①1966 年~1975 年(10 年間)と期間②1966 年~1985 年(20 年間)では、市場

模(

M n[ ] (t))のみで推定をおこなったもの(テスト NO.A12、A15、A23、A25)の誤差が、

両期間とも 0.4%以下と少なかったのに対し、「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」をもち

いて推定したもの(A17、A20、A28、A30)の誤差は 1%~9%に増加した。特に、期間

①1966 年~1975 年(10 年間)は、期間②1966 年~1985 年(20 年間)に比べ、その誤差

の割合が 2~9倍の 模であった。

 一方、期間③1966 年~2002 年(37 年間)では、「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」あ

りのテスト(テスト NO. A05)でも、なしのテスト(テスト NO.A10)でも、誤差比率 0.4%

以下と い精度をしめした。特に、「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」ありのもの(テス

ト NO.A10)では、誤差比率 0.4%が 0.23%と 10テスト中最小であった。

 したがって、以上よりつぎの事実が導かれる。

 (1) 分析期間と 算期間の一致する期間③1966 年~2002 年(37 年間)のケースを除い

て、 線形回帰分析の分析値(自由度修正済決定係数(

R2))の値の 低にかかわらず、

「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」をもちいないケースのほうが い 算精度が得られ

た。それらのケースの 算誤差は、各期間とも 0.4%以下であった。

 (2) 「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」をもちいたケースでは、分析期間と 算期間

が一致するケース(テスト NO.A10)を除いて 算誤差が大きく、分析期間と 算期間の

差が大きいほど、 算誤差が拡大した。それらのケースの 算誤差は、最も大きいもので

9%であった。

 b. 普及初期の 算精度

 つぎに、各テストの 算値の精度を、分析期間全般にわたって比 してみよう。比 に

もちいる数値は、上記 a.同様累積購入数の実績値との差および、同差比率である。

 このチェックでは、各期間・各テストのすべてに共通に、分析期間初期(カラーテレビ

の普及初期の期間にあたる、おおむね最初の 10 年間)の 算誤差がきわめて大きいこと

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が分かる。その累積数誤差は大きいもので 5,200 千台、誤差比率は 1,000%を えるケー

スが生じた。しかし、その後の期間は、例外(テスト NO.A17、A20)はあるものの、

算誤差は徐々に縮小し、分析期間の最終期には誤差比率は上記 a.で示した 0.4%~9%とな

った。

 したがって、このことより、「初回購入数データ」をもちいない 算値は、分析期間初

期の 算値の精度に大きな問題があることが判明した。

 ②実際の「初回購入データ」を使用する方法によるチェック結果:

 実際の「初回購入データ」を使用する方法による普及数 算結果と普及数実績との比

結果は表 6.6.②および図 6.6.②に示す。同表では、前出の表 6.6.①同様、各テストの普及

数 算結果を購入数、累積購入数、累積購入数の実績との差、同差比率の順に時系列で表

している。

 a. 普及末期の 算精度

 「初回購入データ」を 10年分、ないし 20 年分使用する方法によって、分析期間の最終

年(2002年)の累積購入数の実績との差および、同差比率をもとめた場合、上記①a.の「初

回購入数データ」を全く使用しない場合の結果と一致した。

 すなわち、「初回購入データ」を使用した場合でもしない場合でも、普及末期における

累積購入数の 算値と実績値には大きな差はなく、特に「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」

を使用しないで推定したケースでは、累積数の誤差比率は両方とも 0.4%を下回る い精

度が得られることが った。

 b. 普及初期の 算精度

 つぎに、「初回購入データ」を使用する方法により、上記①b.でおこなったように、各

テストの 算値の精度を分析期間全般にわたって比 してみる。

 このチェックでは、分析期間初期(カラーテレビの普及初期の期間にあたる、最初のお

おむね 10 年間)が実績値に置き換えられたことにより、上記①b.でみられたような累積

購入数の大きな 算誤差は消滅した。特に、市場 模のパラメーター(

m n[ ])を使用しな

いケースでは、その累積数誤差は大きいものでも 700 千台、誤差比率は 3%以下であった

(テスト NO.A14、A15)。その傾向は、データ使用数の多い期間②1966 年~1985 年(20

年間)では、より顕著であった。

 すなわち、当然のことではあるが、上記の結果より「初回購入数」の使用データ数が多

いほど 算精度は向上した。

 ③「初回購入データ」の使用数を増加させていく方法:

 それでは、カラーテレビの普及数を分析する場合、どれくらいの数の「初回購入数デー

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101

タ」を使用すれば、 い 算精度を得ることができるのであろうか。

 表 6.6.③および図 6.6.③には、テスト NO.A5 をもちいて、「初回購入数」および「累積

初回購入数」のデータを 1 年目のみ使用したもの、1 年目から 2 年目まで使用したもの、

1年目から 3 年目まで使用したもの、・・・の順で 10 年目まで投入データを順に増加させ

ていった場合の 算精度の変化を示している。

 1 年目のみのデータ(1 データ)使用では最大 155%の誤差比率が観測されたが、3 年目

までのデータ(3 データ)使用では、同誤差比率は最大 20%に縮小した。以下、5 データ

では 10%、8データでは 5%の最大誤差となった。

 したがって、カラーテレビの「初回購入数」の普及初期の状況を分析するには、最初 3

年分の購入データを入手できれば、20%程度の誤差でその普及パターンを予測することが

可能である。また、最初 5 年分のデータをもちいた場合には、その誤差は 10%程度にま

で縮小可能である。

C. チェック結果のまとめ

 以上でおこなったカラーテレビの「初回購入数」の普及データのチェック結果をまとめ

る。

① カラーテレビのように普及率が い製品の普及数は、「市場 模」の変動、すなわち

製品購入の基礎単位となる世帯数の変動に、大きく依存している。したがって、Bass モ

デルによるこのような製品の普及分析や予測には、世帯数のデータを用いることが適切で

ある。

② 製品の普及が進み、普及数が市場飽和点に づく状態にあるとき、それ以降の普及状

況を予測するには、必ずしもモデルに購入数の実績値を使用する必要はない。将来の正し

い市場 模を普及モデル式に投入することにより、ある程度精度の い予測値を得ること

が可能であるからである。

③ カラーテレビの普及のケースでは、分析期間の約 7 年目で単年の普及ピークを え、

約 12 年~13 年で市場飽和点に づいている。したがって、少なくとも 10 年程度の普及

データがあれば、第Ⅲ章で述べたように、Bass モデルをもちいてその製品固有の普及曲

線の推定が可能であるので、ある程度正確な普及の分析や予測をおこなうことができる。

④ 一方、製品がその普及過程の初期段階にあり、市場飽和点達するまでにかなり時間が

かかる状態にある場合、その普及状況の分析や将来予測をすることは、市場飽和点に到達

した製品より困難である。このような状況では、上記③のような普及パターンの分析に必

要な普及ピークを含む十分な数の時系列データが得られないかもしれないからである。

⑤ 上記④と同様の製品が普及過程の初期段階にあるケースでは、分析データ数の不 を

補うため、普及パターンがよく似ていると考えられる製品の分析データを使用して普及の

予測をおこなうことができるかもしれない。しかし、その場合でも、新製品の予想市場

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102

模のほか、初期の購入数実績データを 3 年~5 年分をモデル式に投入しなければ、精度の

い予測値(誤差が 10%~20%)をもとめることができない。

⑥ 製品の普及過程を「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」を用いて分析した場合、「市場

模(

M n[ ] (t))」のデータのみを使用した推定結果に比べて、より いフィットが得られ

る。しかし、その結果を使用して将来予測を実行すると、推定時期と予測時期に差がある

場合には普及数の誤差が拡大する傾向がある。したがって、遠い将来の普及予測をおこな

う場合には、「市場 模(

M n[ ] (t))」のデータだけを用いて分析した推定結果を使用して

予測 算をおこなった方がよいものと思われる。

⑦ 上記⑥とは逆に、分析時期から比 的 い将来の普及予測をおこなったり、「市場

模のパラメーター(

m n[ ])」が分析時期と予測時期とで大きく変化していないと予測され

る場合には、「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」を用いて分析した結果を用いて将来予測

を行った方がより い精度が得られるものと考えられる。

6.7節 初回購入モデルによる将来予測

 前項まででは、2002 年までの「カラーテレビ初回購入数実績データ(CTVDIFNO)」に

基づいて、カラーテレビの普及状況のうち「初回購入数」の分析をおこなった。また、分

析により推定したデータをもちいて「初回購入数」の 算値をもとめ、もとめた 算値と

実績値との比 をおこない、その精度をチェックした。

 本節では、そのチェック結果をふまえたうえで、上記の推定作業で得られた推定値と、

別途加工・作成した「世帯数将来推 データ(SETAI5)」を用いて、今後約 20 年間、す

なわち 2025年までのカラーテレビの普及予測(「初回購入数」に限る)をおこなう。

 なお、予測に用いる普及モデルは、前節までと同様「初回購入モデル(Bass モデル)」

である。したがって、これまで同様、カラーテレビの販売価格や購入世帯の所得水準の変

化、デジタルテレビ等後継機種の出現、アナログ放送の終了等カラーテレビの使用に さ

せる使用可能期間の制約、等の影 を考慮はいっさいないものとする。

A. 将来予測の方法

 将来予測の方法は、「市場 模のデータ(

M n[ ] (t))」に「世帯数将来推 データ(SETAI5)」

を用いるほかは、前 6.6 節「初回購入モデルによる分析結果の検証」でおこなった方法と

同じである。具体的には、6.6 節の A.②「初回購入データを使用する方法」により、「初

回購入モデル式」(式 6.2.⑨、6.2.⑩)に、前節までの分析によって得られた「先導購入の

パラメーター(

r pn[ ])」、「 随購入のパラメーター(

r fn[ ])」、「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」、

および、「市場 模のデータ(

M n[ ] (t) = SETAI 5)」、2002 年までの「初回購入数(

n n[ ] (t))」

および「累積初回購入数(

N n[ ] (t))」のデータを使用し、残りの期間、2003 年~2025 年ま

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103

年~2025年までの「初回購入数」および「累積初回購入数」をもとめる。

 第 6.5 節の「初回購入モデルによる分析結果」では、「市場 模(

M n[ ] (t))」の変数とし

て、各年の世帯数」に「市場 模のパラメーターを乗じたケース(

m n[ ] * M n[ ] (t)、

M n[ ] (t) =

SETAI)」が、最も いフィットを示した。しかし、その推定結果に基づいて算出

した 算値と実績値を比 したところ、「市場 模(

M n[ ] (t))」の変数として、「各年の世

帯数」のみを用いたケース(

M n[ ] (t) =

SETAI)が、最も いフィットを示した。

 したがって、これら最も い説明力を示したテストケースのうち、分析期間が 37 年と

く最多のサンプル数が得られるテスト NO.A5 の分析結果を用いてカラーテレビの将来

の普及予測をおこなうのが、ベストであろうと思われる。しかし、本節では、テスト NO.A5

に加え、前節までと同様フィットのよかったつぎの複数のケースをもちいて、カラーテレ

ビの 2025 年までの「初回購入数」の普及予測をおこない、各テストの結果を比 してみ

る。

  期間①1966年~1975年(10年間):テスト NO.A12、A15、A17、A20

  期間②1966年~1985年(20年間):テスト NO.A23、A25、A28、A30

  期間③1966年~2002年(37年間):テスト NO.A5、A10

B. 将来予測の結果と問題点

 「初回購入モデル」によるカラーテレビの「初回購入数」普及予測結果は、表 6.7.①の

通りである。なお、図については、テスト NO.A5 と A10 のみ代表例として図 6.7.①に記

載する。

 本予測結果は、将来のカラーテレビの普及数の予測値であるので、どの程度正確に将来

普及数を示しているのかは現時点では らない。しかし、第 6.6 節の推定結果のチェック

で得た結果から推測して、「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」を使用しないもののなかで、

分析期間の最も いテスト NO.A5 による予測値が最も真の将来普及数に い結果である

と考えられる。実際に、「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」を使用したテスト結果による

予測値は、それを使用せず「市場 模(

M n[ ] (t))」のデータのみで推定したテスト結果に

よる予測値より、期間①1966年~1975年(10年間)のケースで 10%、期間②1966年~1985

年(20 年間)のケースで 3%~5%低く表示されており、同推定結果のチェック同様過小

に 算されている可能性が いことを示している。

 しかし、これらの予測結果を詳細にみていくと、この最も正確な予測値と推測されるテ

スト NO.A05の予測値をでさえ、以下の重大な問題点を見つけることができる。すなわち、

 ①世帯数が減少傾向に転ずる 2016年以降、当期購入数がマイナスの数値を示す。

 ②上記①にもかかわらず、2016 年には「累積購入数の世帯数将来推 値比」が 100%に

到達し、2025年には 100.14%まで上昇する。

 まず、上記①の問題点は、推定式 6.2.⑨の右辺第2項の「残存市場 模(市場 模

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104

M n[ ] (t))—累積購入数(

N n[ ] (t)))」がマイナスになることから生ずる。この「残存市場

模(

M n[ ] (t) - N n[ ] (t))」のマイナスの値は、世帯数の減少により市場に余剰となった既購

入製品があふれている状態を示している。しかし、このような余剰既購入製品数に「先導

購入のパラメーター(

r pn[ ])」や「 随購入のパラメーター(

r fn[ ])」を掛け合わせても、

製品の普及に関連して意味のある数字は得られない。つぎに、上記②の問題点は、2016

年以降カラーテレビを初めて購入した世帯の累 数が全世帯数を上回ることを示している。

しかし、本分析に使用したデータは、普及率からもとめたカラーテレビの「初回購入数デ

ータ」であるので、市場 模の上限である世帯数を上回ることは決してありえないはずで

ある。したがって、これら2つの問題点は、本分析の前提条件を逸脱した結果を示してい

るものであり、分析モデルに何らかの不備や間違いが生じているものと考えて間違いない

ものと思われる。

 一方、分析に「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」を用いて推定したテスト NO.A10 の予

測結果はどうであろうか。同テストでは、2016 年の「累積初回購入数/世帯数将来推

比」は 99.36%であり、2025 年でも 99.48%と一見リーゾナブルな値を示している。しか

し、上記テスト NO.A5 の予測結果と同じく、2016 年以降、当期購入数がマイナスの数値

を示している。したがって、テスト NO.A10 についても、「市場 模」が減少する場合、

分析モデルに問題が生じていると考えられる。

 このような問題は、以下に述べる Bass モデルの仮定の不備に 因している。普及率の

い製品では、大幅な市場の縮小が生じた場合、すなわち新 の購入数を上回るような既

存購入世帯数の減少が発生した場合は、それに応じて市場に出回っている使用中の製品数

が減少するはずである23。しかし、Bass モデルでは、そのような状況が想定されていない

ため、「市場 模(

M n[ ] (t))」の縮小に応じた「累積初回購入数(

N n[ ] (t))」のマイナス方

向への調整がおこなわれない。したがって、Bass モデルでは、「市場 模(

M n[ ] (t))」が

減少していく場合には、「累積初回購入数(

N n[ ] (t))」が過大に表示され、誤った結果や意

味のない数字を示すことになる。

 なお、上記の予測は、世帯数の減少傾向が始まらない段階まではうまく機能しているも

のと思われる。世帯数がピークを える 2015 年までの予測値は、上記①、②の問題が生

じておらず、リーゾナブルな予測値として受入可能である。

C. 「市場 模(

M n[ ] (t))」の縮小に対応した調整と予測結果

 上記のように、Bass モデルは人口や世帯数の減少による市場 模の縮小に対応してい

ない。したがって、そのような市場の縮小傾向が想定される場合の製品の普及予測をおこ

23 当該製品の中古市場が整備されている場合、余剰となった既購入製品は中古市場に放出されるかもしれない。しかし、本文中にも記載しているが、このような中古市場 模に「先導購入のパラメーター(

r pn[ ])」や

「 随購入のパラメーター(

r fn[ ])」をかけても、意味のある購入数の値は得られない。

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105

なうには、必要に応じてモデルの改良を行う必要がある。本節では、推定式 6.2.⑨をもと

に、世帯数減少傾向が開始される 2016年以降に適用可能な 算式を示す。

 式 6.7.①は、式 6.2.⑨をもとに、市場 模の縮小に対応して調整をおこなったものであ

る。同式では t-1 期の「累積初回購入数(

N n[ ] (t -1))」を「調整済み累積初回購入数

N ' n[ ] (t -1))」に変更している。また、式 6.7.②は、t-1 期の「調整済み累積初回購入数

N ' n[ ] (t -1))」の 算方法を、式 6.7.③は、t 期の「累積初回購入数(

N n[ ] (t))」の 算方

法を示している。

   

n' n[ ] (t) = r pn[ ] + r f

n[ ] * N ' n[ ] (t -1) M n[ ] (t)( )[ ] * M n[ ] (t) - N ' n[ ] (t -1)( )       (6.7.①)

   

N ' n[ ] (t -1) = N n[ ] (t -1) + M n[ ] (t) - M n[ ] (t -1)( ) * N n[ ] (t -1) M n[ ] (t -1)( )     (6.7.②)

   

N n[ ] (t) = N ' n[ ] (t -1) + n' n[ ] (t)                     (6.7.③)

 これらの式は、つぎのことを示している。世帯数の減少(「市場 模」の縮小:

M n[ ] (t) - M n[ ] (t -1))が t-1 期と t 期との間に生じたとき、市場に普及している製品数(「累

積初回購入数」:

N n[ ] (t -1))は、縮小した「市場 模」の数とそのときの製品普及率

N n[ ] (t -1) M n[ ] (t -1))に応じて減少するはずである。なぜなら、世帯構成員の死亡、等

の理由により消滅した世帯が保有していた製品は、通常そのまま市場には存在せず、廃棄

されるか他の世帯に「 加購入」分として転売もしくは譲渡され、「初回購入市場」から

退出するからである。

 したがって、t 期の「調整済み初回購入数(

n' n[ ] (t))」を決定する t-1 期の「調整済み累

積初回購入数(

N ' n[ ] (t -1))」は、t-1期の「累積初回購入数(

N n[ ] (t -1))」から「市場 模」

の減少数(

M n[ ] (t) - M n[ ] (t -1))に当該製品の普及率(

N n[ ] (t -1) M n[ ] (t -1))を乗じた数値

を差し引くことによってもとめられる。なお、t 期の「累積初回購入数(

N n[ ] (t))」は、t-1

期の「調整済み累積初回購入数(

N ' n[ ] (t -1))」に t 期の「調整済み初回購入数(

n' n[ ] (t))」

を加えたものである24。このような調整をおこなえば、「残存市場 模(

M n[ ] (t) - N ' n[ ] (t -1))」

がマイナスになったり、「 随購入のパラメーター(

r fn[ ])」にたいする「既購入者のプレ

ッシャー(

N ' n[ ] (t -1) M n[ ] (t))」が過大に表示されることなく、リーゾナブルな「調整済み

購入数(

n' n[ ] (t))」がもとめられるはずである。

 表 6.7.②と図 6.7.②は、テスト NO.A5、および A10 をもとに、「市場 模」の縮少に対

応した調整済み予測購入数を示す改良を加えたものである。また、表 6.7.③は、それらの

5 年ごとのサマリーを記載している。テスト NO.A5 同調整済みモデルでは、2016 年以降

も「初回購入数(

n' n[ ] (t))」はプラスを維持するが、漸減してゆき 2025 年には 0 となる。

製品の普及数を示す「累積初回購入数(

N n[ ] (t -1))」は「市場 模」の縮少により減少す

24 t 期の「累積初回購入数は、

N n[ ] (t)」である。t 期の「調整済み累積初回購入数は(

N ' n[ ] (t))」は、翌期 t+1期の「市場 模」の減少を反映した将来の数値なので、当期である t 期の「累積初回購入数」を表さない。

Page 26: I 実証分析 - osaka-gu.ac.jp...ね1960年代中半から2002年までの約35~40年間である。また、将来予測の期間は、デ ジタルテレビについては2003~2015年の12年間、アナログテレビについては2025年ま

106

るが、普及率はほぼ 100%に収斂し、「市場 模」である世帯数(49,497 千世帯)にほぼ

一致する。

 つぎに、テスト NO.10 では、第 6.6 節でも述べたように、1966 年~2002 年までの「市

場 模のパラメーター(

m n[ ])」が 1966 年~予測年(2003 年~2025 年)までのそれと一

致するか、きわめて い値を持つとき、上記のテスト NO.5 による予測よりも い精度を

示す可能性がある。同調整済みモデルでは、テスト NO.A5 による修正済み予測値と同じ

く、2016 年以降も「初回購入数(

n' n[ ] (t))」はプラスを維持するが、漸減してゆき 2025

年には 0 となる。製品の普及数を示す「累積初回購入数(

N n[ ] (t -1))」は市場 模の縮少

により減少するが、普及率は「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」の値が示す 99.36%に収

斂し、2016年には 49,324千台となる。

表 6.7.③ 「初回購入モデル」による将来予測サマリー(市場 模縮小調整あり)

 ところで、「初回購入数」が将来ゼロになる、つまりカラーテレビを初めて購入する世

帯がなくなるという結果が問題になるかもしれない。しかし、本分析では、第 6.3.節で説

明したように、世帯構成員の変化、すなわち世代交代を考慮していない。したがって、本

モデルの世界では、普及の飽和水準に達した時点で、カラーテレビを購入する可能性のあ

る世帯のすべてにカラーテレビがいきわたり、初めて購入する可能性のある世帯はもはや

存在しないかのような状態を示すことになる。しかし、このような状態からでも、もし、

世帯数の増加や普及率の上昇が こり、カラーテレビの市場が普及飽和水準を えて拡大

することになれば、再び「初回購入数」は増加に転ずることになるであろう25。

 以上のように、本項では、Bass モデルに「市場 模(

M n[ ] (t))」の縮小に対応した調整

を加え、2003年~2025年のカラーテレビの「初回購入数」の将来予測を作成した。また、

この普及数将来予測は、「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」を使用しないモデルとそれを

使用するモデルの2種 で行った。前者では最終的な飽和市場 模を世帯数の 100%、後

者では 99.36%と仮定しているために、両者の予測結果には予測の最終年である 2025 年

で約 319 千台の差が生じた。約 319 千台の差は予測値の誤差としてはさほど大きなもので

はないので、筆者は上記の2つの予測の両方ともが 容可能であると考える。

25 ただし、カラーテレビの普及率は 2002 年で 99.4%と く、これ以上普及率が上昇する余地は限られている

のではあるが。

A5 修正済み予測値2003-2025 A10 修正済み予測値2003-2025

YEAR nt66-02msetai Nt66-02msetai 世帯比(%) nt66-02pmsetai Nt66-02pmsetai世帯比(%)

2000 744,310 46,592,116 99.00 744,310 46,592,116 99.00

2005 438,188 48,825,062 99.56 412,212 48,548,989 99.00

2010 181,553 50,051,995 99.83 178,411 49,742,537 99.21

2015 38,931 50,457,573 99.96 37,252 50,136,543 99.33

2020 132 50,269,938 100.00 78 49,947,192 99.36

2025 0 49,643,000 100.00 0 49,324,250 99.36

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107

 しかし、さらにこの誤差をミニマイズする必要があるとするなら、つぎのような方法も

検討可能である。まず、2025 年時点での真の飽和市場 模は、おそらくこれら 99.36%~

100%水準の間にあると考えられる。したがって、この範囲内にある真の飽和市場 模を、

過去のデータから推定すればよい。すでに、われわれは 1966 年~2002 年までのカラーテ

レビの普及率データを保有している。それらのデータにフィットする曲線(もしくは直線)

の値を推定し、得られた推定値を使用して、2025 年の予測普及率を 算する。これらの

作業に間違いがなければ、得られる数値は上記の飽和市場 模の予測範囲内にあるはずで

ある。最後に、その予測普及率値をテスト NO.A10 の「市場 模のパラメーター(

m n[ ])」

に代入することにより、さらに精度の い予測普及数をもとめることができると思われる。

6.8節 本章のまとめ

 本章では、「初回購入モデル」により、アナログテレビ(カラーテレビ)の普及データ

を分析し、得られた推定結果の検証と普及数の将来予測を実施した。

 本稿の「初回購入モデル」は、ある世帯が当該製品を初めて購入する行動を「世帯」単

位かつネット世帯数で把握するもので、世帯内 での構成員の移動や、世帯構成員の独立、

あるいは死亡による新 世帯の発生、または既存世帯の消滅を個別に把握するものではな

い。

 本モデルのもとになるである「Bass モデル」は、本来耐久消費財の初回購入 要を説

明するものであるので、本「初回購入モデル」で用いる推定式は、第Ⅲ章の「Bass モデ

ル」式における「市場 模のパラメーター(m)」を、世帯数推移を表す「市場 模のデ

ータ(

M n[ ] (t))」に置き換えた式 6.2.⑨で示される。なお、同式中の各記号は、同様に「当

期初回購入数(

n n[ ] (t))」「先導購入のパラメーター(

r pn[ ])」、「 随購入のパラメー

ター(

r fn[ ])」、「累積初回購入数(

N n[ ] (t -1))」を示し、

N n[ ] (t -1) M n[ ] (t)( )は潜在的購入者

に対する既購入者の購入圧力、

M n[ ] (t) - N n[ ] (t -1)( )は残存潜在市場 模を意味する。

   

n n[ ] (t) = r pn[ ] + r f

n[ ] * N n[ ] (t -1) M n[ ] (t)( )[ ] * M n[ ] (t) - N n[ ] (t -1)( )       (6.2.⑨)

 本モデル特徴の一つとして、上式における「当期初回購入数(

n n[ ] (t))」、および「累積

初回購入数(

N n[ ] (t -1))」には、アナログテレビの世帯普及率より加工・作成した「カラ

ーテレビの初回購入数データ(CTVDIFNO)」を用いており、データ中に「 加購入」や

「置換購入」の要素を含まないため、「販売数」等、他のデータよりも「初回購入」の分

析に適している。なお、本データをはじめ、次章以降でのべる加工・作成データ「 加購

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108

入数」、「置換購入数」、および「販売数」の各データは、「テレビは生活必 品であり、故

障すれば必ずすぐに買換られる」という仮定のものに作成されており、各データの関係は

式 6.3.①に示される。

   「当期購入数」=「当期初回購入数」+「当期 加購入数」

                  -「当期廃棄数」+「当期置換購入数」

   (ただし、「当期廃棄数」=「当期置換購入数」)          (6.3.①)

 本章の分析と検証には、分析期間を①1966 年~1975 年(10 年間)、②1966 年~1985 年

(20 年間)、および③1966 年~2002 年(37 年間)の 3 期間に 定し、複数の市場 模デ

ータをテストしたが、いずれの分析期間についても、市場 模に世帯数推移データを使用

したものが良好な結果を示し、カラーテレビの場合約 5 年分の購入データを使用すれば、

実績値と比 してまずまずの 算値がもとめられることが確認された。

 予測では、2003 年~2025 年までの「初回購入数予測値」を算出したが、市場 模であ

る世帯数の減少を考慮した場合には、ベストモデルであるテスト NO.A5のケースで、2010

年には 50,052 千台(世帯普及率 99.83%)、2015 年には 50,458 千台(同 99.96%)で普及

数のピークを え、2025年では 49,643千台(同 100%)となると予測された。

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109

第Ⅵ章図

図 6.2.① Bass モデル(初回購入モデル)概念図

                        「 随的影

r fn[ ]( )」既購入者による製品情報の伝達

                                  

                      

                                     累積的影

Dt = +1( )

                     「先導的影

r p( )」マスメディアによる製品情報の伝達

                          負の影

-( )

   

n pn[ ] (t) = r p M n[ ] (t) - N n[ ] (t -1)( )

   

n fn[ ] (t) = r f * N n[ ] (t -1) M n[ ] (t)( ) M n[ ] (t) - N n[ ] (t -1)( )

出所:筆者にて作成。

 残存潜在

 市場 模

M n[ ] (t)-N n[ ] (t -1)

Ê

Ë Á Á

ˆ

¯ ˜ ˜

 購入者数

 

n n[ ] (t)( )

累 積 購 入 者

 

N n[ ] (t)( )

 広告、等潜 在 市 場

M n[ ] (t)( )

先 導 購 入 者

 

n pn[ ] (t)( )

随 購 入 者

 

n fn[ ] (t)( )

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110

図 6.3.① カラーテレビの普及数と世帯数

カラーテレビの普及数と世帯数

05,000,00010,000,00015,000,00020,000,00025,000,00030,000,00035,000,00040,000,00045,000,00050,000,000

0 10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

普及数

世帯数

系列1

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111

図 6.6.① 初回購入モデルによる分析結果の検証(データなしの場合の 算値)

A12

A12 購入数(データなし)

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A12 累積購入数(データなし)

0

5,000,000

10,000,000

15,000,000

20,000,000

25,000,000

30,000,000

35,000,000

40,000,000

45,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

系列3

A15

A15 購入数(データなし)

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A15 累積購入数(データなし)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A17

A17 購入数(データなし)

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A17 累積購入数(データなし)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A20

A20 購入数(データなし)

-3,000,000

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A20 累積購入数(データなし)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A23

A23 購入数(データなし)

-4,000,000

-2,000,000

0

2,000,000

4,000,000

6,000,000

8,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A23 累積購入数(データなし)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

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112

A25

A25 購入数(データなし)

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A25 累積購入数(データなし)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A28

A28 購入数(データなし)

-3,000,000

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A28 累積購入数(データなし)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A30

A30 購入数(データなし)

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A30 累積購入数(データなし)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A5

A05 購入数(データなし)

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A05 累積購入数(データなし)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A10

A10 購入数(データなし)

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

単年差

A10 累積購入数(データなし)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

Page 33: I 実証分析 - osaka-gu.ac.jp...ね1960年代中半から2002年までの約35~40年間である。また、将来予測の期間は、デ ジタルテレビについては2003~2015年の12年間、アナログテレビについては2025年ま

113

図 6.6.② 初回購入モデルによる分析結果の検証(データあり場合の 算値)

A12

A12 購入数(データあり)

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A12 累積購入数(データあり)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A15

A15 購入数(データあり)

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A15 累積購入数(データあり)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A17

A17 購入数(データあり)

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A17 累積購入数(データあり)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A20

A20 購入数(データあり)

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A20 累積購入数(データあり)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A23

A23 購入数(データあり)

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A23 累積購入数(データあり)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

Page 34: I 実証分析 - osaka-gu.ac.jp...ね1960年代中半から2002年までの約35~40年間である。また、将来予測の期間は、デ ジタルテレビについては2003~2015年の12年間、アナログテレビについては2025年ま

114

A25

A25 購入数(データあり)

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A12 累積購入数(データなし)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A28

A28 購入数(データあり)

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A28 累積購入数(データあり)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A30

A30 購入数(データあり)

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A30 累積購入数(データあり)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

Page 35: I 実証分析 - osaka-gu.ac.jp...ね1960年代中半から2002年までの約35~40年間である。また、将来予測の期間は、デ ジタルテレビについては2003~2015年の12年間、アナログテレビについては2025年ま

115

図 6.6.③ 初回購入モデルによる分析結果の検証(データ数可変の場合の 算値)

A5 データ 1年間

A5 購入数(データ1年間)

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A5 累積購入数(データ1年間)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A5 データ 2年間

A5 購入数(データ2年間)

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A5 累積購入数(データ2年間)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A5 データ 3年間

A5 購入数(データ3年間)

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A5 累積購入数(データ3年間)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A5 データ 4年間

A5 購入数(データ4年間)

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A5 累積購入数(データ4年間)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A5 データ 5年間

A5 購入数(データ5年間)

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A5 累積購入数(データ5年間)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

Page 36: I 実証分析 - osaka-gu.ac.jp...ね1960年代中半から2002年までの約35~40年間である。また、将来予測の期間は、デ ジタルテレビについては2003~2015年の12年間、アナログテレビについては2025年ま

116

A5 データ 6年間

A5 購入数(データ6年間)

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A5 累積購入数(データ6年間)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A5 データ 7年間

A5 購入数(データ7年間)

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A5 累積購入数(データ7年間)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A5 データ 8年間

A5 購入数(データ8年間)

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A5 累積購入数(データ8年間)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A5 データ 9年間

A5 購入数(データ9年間)

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A5 累積購入数(データ9年間)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A5 データ 10年間

A5 購入数(データ10年間)

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

A5 累積購入数(データ10年間)

-10,000,000

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

1966196919721975197819811984198719901993199619992002

実績値

算値

Page 37: I 実証分析 - osaka-gu.ac.jp...ね1960年代中半から2002年までの約35~40年間である。また、将来予測の期間は、デ ジタルテレビについては2003~2015年の12年間、アナログテレビについては2025年ま

117

図 6.7.① 初回購入モデルによる将来予測(市場 模縮小による影 未調整)

A5

A5 購入数将来予測(市場 模縮未 整)

-200,000

-100,000

0

100,000

200,000

300,000

400,000

500,000

600,000

700,000

800,000

2000200220042006200820102012201420162018202020222024

予測値

A5 累積購入数将来予測(市場 模縮小未 整)

44,000,000

45,000,000

46,000,000

47,000,000

48,000,000

49,000,000

50,000,000

51,000,000

2000200220042006200820102012201420162018202020222024

予測値

A10

A10 購入数将来予測(市場 模縮小未 整)

-200,000

-100,000

0

100,000

200,000

300,000

400,000

500,000

600,000

700,000

800,000

2000200220042006200820102012201420162018202020222024

購入数

A10 累積購入数将来予測(市場 模縮小未 整)

44,000,000

45,000,000

46,000,000

47,000,000

48,000,000

49,000,000

50,000,000

51,000,000

2000200220042006200820102012201420162018202020222024

予測値

図 6.7.② 初回購入モデルによる将来予測(市場 模縮小による影 調整済み)

A5

A5 購入数将来予測(市場 模縮小 整済み)

0

100,000

200,000

300,000

400,000

500,000

600,000

700,000

800,000

2000200220042006200820102012201420162018202020222024

予測値

A5 累積購入数将来予測(市場 模縮小 整済み)

44,000,000

45,000,000

46,000,000

47,000,000

48,000,000

49,000,000

50,000,000

51,000,000

2000200220042006200820102012201420162018202020222024

予測値

A10

A10 購入数将来予測(市場 模縮小 整済み)

0

100,000

200,000

300,000

400,000

500,000

600,000

700,000

800,000

2000200220042006200820102012201420162018202020222024

系列1

A10 累積購入数将来予測(市場 模縮小 整済み)

44,000,000

45,000,000

46,000,000

47,000,000

48,000,000

49,000,000

50,000,000

51,000,000

2000200220042006200820102012201420162018202020222024

予測値