第8回 J-PALS -...

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報告書 第8回 J-PALS 患者支援団体活動の成功事例から学び、 自立する医療に繋げよう! パート1 Japan Patient Advocacy Leaders Summit日時:2013年 7 月 6 日(土) 場所:グラクソ・スミスクライン株式会社 本社 主催:グラクソ・スミスクライン株式会社

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  • 報 告 書

    第8回 J-PALS

        患者支援団体活動の成功事例から学び、        自立する医療に繋げよう!

       パート1

    -Japan Patient Advocacy Leaders Summit-

    日時:2013年 7月 6日(土)

    場所:グラクソ・スミスクライン株式会社 本社

    主催:グラクソ・スミスクライン株式会社

  • 第8回患者支援団体代表者サミット、「J-PALS」開催!

    活動の事例から学び、自立する医療につなげよう!

    Do More, Feel Better, Live Longer Patient Advocacy

    *1 J-PALS(Japan Patient Advocacy Leaders Summit)は、患者支援団体が疾患や組織の枠を

    超えて交流し学び合う場として年に1度の頻度で開催。2006年からGSKがサポートしています。

     2013年度 の「J-PALS*1」、患者支援団体代表者サミットが、2013年7月6日、GSK本社ビ

    ルで開催されました。今年のテーマは、「患者支援団体活動の成功事例から学び、自立す

    る医療につなげよう! パート1 」。これまでのJ-PALSの活動を踏まえ、次回、次々回に

    繋がるプログラムとして、講演、ワークショップ、パネルディスカッションが行なわれ、

    29団体47名の参加者が情報交換や討論を通して交流と学びを深めました。

    様々な角度から疾患・団体を超えて共通するテ

    ーマについて学んできた過去7年間のJ-PALSの

    中で、自発的に組織された疾患横断的な「患

    者の自立プロジェクト」で長期的に検討され、

    提案に至った「患者の自立」の定義そして「自

    立した患者」の将来像について改めて振り返

    り、患者団体活動の目指す方向性について認

    識を深めてきました。

    過去7年間のJ-PALSで検討され、認識を深めてきたこと

    「患者の自立」の定義:

    患者自らが医療や生活の質にかかわる意思決定

    に主体的に参加し、自らの人生を歩むこと

    「自立した患者」の将来像:

    偏見のない社会で自立した患者が健常人と同じ

    社会的立場を確立すること

    更に2012年のJ-PALSでは、アドボカシー活動の将来像として“一般市民を巻き込み、同じ

    ゴールを見据えたパートナーシップ”を目指す上で、「疾病を超えた好事例の共有」、「疾

    病毎の閉じられた患者団体から開かれた新しいアドボカシー活動へのシフト」が必要であるこ

    とが議論されました。

     これらの過程を経て、各団体の活動事例を正しく理解し、共有することから次のステップに

    つなげる道筋として今回のテーマが設定されました。

    開会のあいさつ       GSK 専務取締役 開発本部長 高橋 希人

    希少疾患領域にも取り組み続けます

    かつてドラッグ・ラグが日本で大きな社会

    問題でした。外国で使われている優れた薬

    が日本の患者さんになかなか届かなかった

    のです。日本で承認されるためには、開発を

    すべてやり直さねばならなかったからです。

    しかし 2005 年以降から国際共同開発が始

    まり、世界同時に新薬の開発に着手できるよ

    うになりました。

  • Do More, Feel Better, Live Longer Patient Advocacy

    今、世界と日本の承認時期のギャップは 1

    年以内に縮まり、日本で先に承認される例も

    増え、新薬を待ち望んでいる日本の患者さん

    にとって大きな福音となっています。

    製薬企業は、未だ有効な治療法がない医療

    ニーズを満たし、治療が困難な領域を克服す

    ることを目指して新薬の開発に取り組んで

    います。今日では治療方法がない疾病領域は

    だいぶ減ってきましたが、それでも十分とは

    いえない領域がまだまだたくさん残ってい

    ます。とりわけ難病や稀少疾患の領域では治

    療薬の開発に困難が伴います。

    ~ジャーナリストの立場から~

    民主党政権の時代に「社会保障と税の一体

    改革」が打ち出され、関連8法が成立しまし

    た。社会保障全体をよくしていくためにはど

    うしても財源の裏づけが必要だということ

    で、消費税が 5%から 8%へ、8%から 10%へ

    と段階的に引き上げられることが決まりま

    した。

    しかし、消費税増収分は、すべてが年金・医

    療・介護・少子化対策等の社会保障に充当

    されるわけではありません。消費税が 5%増

    えても、実際に社会保障充実のために充てら

    れるのは実は1%分のみです。これまで国は

    歳出超過分を赤字国債の発行で補ってきま

    したが、その返済などに 4%分が充てられる

    のです。

    私共GSKでは従来から稀少疾病用医薬品の領域

    に力を注いできました。現在、弊社が製造・販売

    ・開発している製品には稀少疾病用医薬品の指

    定を受けているものが19品目あります。これは

    日本の製薬会社の中で最も多い製品数です。弊

    社はまた、「稀少専家」というWEBサイトで、稀

    少疾病に関する情報を広く提供しています。さ

    らに、このJ-PALSをはじめとする様々な患者支

    援活動のサポートを国内外で積極的に展開して

    います。今後も皆さまの期待に応えられるよう、

    更に努力を続けていきたいと考えています。

    講演 今、医療で起こっていること

    社会保障・税一体改革を概観して

    日比野 守男氏  

     東京医療保健大学 教授

     新聞記者として、事件・事故をはじめ、東京都

    政、原子力、航空・宇宙開発、医学・医療、文芸等

    々幅広い様々なジャンルを取材。1996年~ 2012

    年まで東京新聞・中日新聞論説委員。2011年 4

    月より現職。

    消費税 1%は約 2.7 兆円に相当します。こ

    れで医療介護の充実、年金制度の改善、子育

    て支援等を行っていかなくてはならないの

    です。自公政権時代に社会保障国民会議が行

    った試算では、質の高い医療・介護への一体

    改革には消費税換算で 4%の引き上げが必

    要だとする結果が出されました。

     基礎年金を全額税で賄うためには 4.5 ~

    13%相当の引き上げが必要だとする結果も

    出ました。さて、実際には 1%の増加分しか

    使えないとなりますと、この先どうなるので

    しょうか。消費税 10%への引き上げで済む

    のかという疑問も湧いてきます。

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     「財政出動」「金融緩和」「成長戦略」の「3

    本の矢」を基本方針とするアベノミクスは、

    医療関連の政策として、医薬品・医療機器開

    発と再生医療研究の推進、先進医療対象範囲

    の拡大、先進医療ハイウェイ構想の推進、一

    般医薬品のネット販売の解禁、難病患者のデ

    ータベース構築、等を挙げています。

     混合診療の全面解禁案は盛り込まれず、持ち越しとなりました。難病対策については、今年1月に厚労省がまとめた報告書に、<難病というのは遺伝子レベルの問題であり一定の割合で発生するから、誰もがなる可能性がある。従って難病患者は社会全体で支えるべきだ>という内容の記述があります。

    更に、難病指定疾患を現在の56疾患から目標の300疾患以上へ増やして助成を行っていくには現行の予算額1300億円では足りないとして、① すべての患者から所得に応じて一定の自己負担を求める ② 入院時の食事・生活療養費等一部負担の見直しを行う、などの政策を提言しています。この様な昨今の動向は、国も民意も客観性、公平性のある政策を重んずる時代を反映しており、今後注目されます。

    出典:「社会保障・税一体改革で目指す将来像(厚生労働省 平成24年3月30日)」

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    ~市民リーダーの立場から~90兆円余りのうち、22兆円が国債の利払い

    や返済に、16兆6千億円が地方への交付に使

    われ、残りの使える予算51兆2千億円のうち

    の26兆円が社会保障に使われています。支

    出全体に占める社会保障費の割合は、1980

    年には26.7%だったのが現在は50%を超え

    ています。社会保障費だけ増えて、ほかの

    予算はすべて減っているのが現状です。

    日本の社会保障は保険料で賄われている部

    分が大きいので、全部を足し上げると 1年に

    110 兆円が社会保障費として使われている

    ことになります。そのうち半分が年金、約 35

    %が医療費に、15%が福祉その他に使われて

    います。医療費抑制の努力はジェネリック医

    薬品の促進や DPC 制度(入院 1日あたりの定

    額支払い制度)の導入などでそれなりの努力

    はされてはいますが、医療費増加のスピード

    が速く財政状況は非常に厳しいのです。

     3つめの問題は先端医療の開発の立ち遅れ

    です。日本の医療は進んでいるようでいて、

    実は先端医療においては欧米に後れを取っ

    ているのが現状です。

     世界保健機関WHOは日本の医療制度は世界

    No.1であると評価しています。確かにこれ

    までは質の高い医療、安い医療費、フリー

    アクセス(医療機関を自由に選択できるこ

    と)が高く評価されてきました。

     しかし、前述したような構造的問題を抱

    えながら、3本柱を中核とした世界に冠たる

    皆保険制度を今後も持続していけるでしょ

    うか。私は、もうそろそろ限界にきている

    のではないかと思います。

    日本の医療制度を持続させるために皆で考えよう

    関原 健夫氏 日本対がん協会常務理事

     6回のがん手術を受け完治。闘病記が「NHKス

    ペシャル-働き盛りのがん」としてドキュメン

    タリー化。「がん対策基本計画」作りにも参画。

    銀行等の要職を経て、現在は日本対がん協会常

    務理事の外、数社の社外役員や中医協公益委員

    や医療関係の政府委員も務める。

    急速な少子高齢化や経済の低迷といった

    深刻な環境変化が起こる中で、問題を先送

    りし、対応に遅れをとった結果、いま日本

    の医療は構造的な問題に直面しています。

     問題の1つめは医療現場の疲弊です。急速

    に高齢化が進み、がんや脳卒中等の生活習

    慣病や認知症・心の病等が急増する中、専

    門医やコメディカル(医師と共に、医療上

    大事な役割を果たす職種)の不足・過重労

    働、効率化の遅れ、地域格差、診療科偏在、

    医療訴訟等、様々な問題が山積し、それら

    への対応に医療の現場が喘いでいます。

     問題の2つめは医療財政の危機です。医療

    費は急激に増加しているのに、それを賄う

    だけの税収や保険料がありません。わが国

    の歳出は年々増え続けており、1年に90兆

    円余りが一般会計として使われています。

  • Do More, Feel Better, Live Longer Patient Advocacy

    高齢化がますます進み高い医薬品も増える

    中で確実にふくらむ医療費を誰が負担するか。増税、保険料の値上げ、医療費自己負担率の引き上げを進めるべきか。基礎的医療は公的保険で賄いつつ付加的サービスは自費負担とする混合診療も検討せざるを得ないのではないか。

    全国で8000以上ある病院の機能分担・集約化を進めるべきではないか。皆保険を導入している国のうち、保険証1枚で誰もがどこの病院に何時でもかかれるのは日本だけであるが、このフリーアクセスに何らかの制限を加えるべきであるか否か…。日本の医療制度を持続させるために私たちはどうすべきなのか、皆さんと共に考えていきたいと思います。

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    日本の年金・医療・介護は、これまでの急速な高齢化に対して、制度改正を行いながら、必要な給付の確保を図ってきました。この結果、社会保障給付費は増加を続け、現在では100兆円を超えています。 こうした中、日本の医療は世界第1位の評価を受けるとともに、日本人の平均寿命は世界最長水準となっています。

    WHO

    Newsweek (

    21 2010 2012 2012 24 24 1 24

    1950,1960,1970,1980,1990,2000 2009 2012

    社会保障給付費の推移

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    今年は、患者団体と製薬業界の間で共通するテーマでもある「より良い治療環境をつくる上での

    協働」に関する活動事例について、各団体から当該事例の概要を事前に提出いただき、当日各 5分

    間で内容を確認し、20 団体の活動事例をより理解しながら、共有しました。主に「大変だったこと」

    「苦労したこと」などが発表され、患者支援団体として共通する課題を参加者全員で確認・検討し

    ました。発表に先立ち、今回ファシリテーターを務めた小林信秋・若尾直子両氏から、長年の経験

    を通じて「自ら活動」することの意義、大切なプロセスについてメッセージがありました。

    成功事例と『大変だったこと、苦労したこと』

    発表者:20団体の代表者の皆さん

    ファシリテーター:認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワーク 会長 小林信秋さん

             NPO法人 がんフォーラム山梨 理事長/山梨まんまくらぶ代表 若尾直子さん

    アドバイザー:関原健夫さん、日比野守男さん

    ワークショップ ~ 20 団体が活動事例を発表~

    私の長男は5歳のときに麻疹(はしか)を

    原因として亜急性硬化性全脳炎(SSPE)を

    発症しました。SSPEは年間発症件数がわず

    か十数件という稀少疾患でした。まもなく

    私は主治医に勧められてSSPE患児の親の会

    「SSPE 青空の会」を創立しました。その後、

    仲間たちと共に活動し、治療薬のオーファ

    ンドラッグ指定やSSPEの難病指定を実現さ

    せました。更にその後、すべての難病の子

    どもとその家族へ対象を拡げた支援活動を

    目指し、1988年に「難病のこども支援全国

    ネットワーク」を立ち上げました。

    「SSPE青空の会」も「難病のこども支援全国ネ

    ットワーク」も、病気の子どもとその家族に相

    互交流や心理面でのサポートを提供すると同時

    に、医療・福祉・教育の世界へ働きかけをし、更

    には社会一般に対して患者の存在や彼らを取り

    巻く状況を知らしめる社会教育的役割も果たし

    てきました。その意味で、会の活動はまさしく

    市民活動と言えると思います。

    こうした活動の体験から私は様々なことを学

    びました。まず、目標の実現へ向かって運動

    を展開する時に大切なのは「こぶしを振り上

    げる」ことではなく「仲間を作る」ことだとい

    うことを知りました。たとえば役所へ陳情に

    行くとき、最も大切なのは相手に「仲間」に

    なってもらうことです。お世辞のひとつも言

    い、涙の2粒も見せて、まず聴く耳を持っても

    らうところから始めましょう! また、仲間

    と共に活動する時に大切なのは、一途である

    こと、妥協できること、いつもニコニコして

    いること、そしてなおかつ頑固であることで

    す。人はひとりでは何もできません。まず、

    あなたのファンを作りましょう。

    患者支援活動から私が学んだこと―『仲間を作る』小林 信秋さん

    ファシリテーターの若尾さん(左)と小林さん(右)

  • Do More, Feel Better, Live Longer Patient Advocacy

    に押し寄せて、踊りの集団が一気にふくらん

    でいきます。

     何度も映像をみているうちに、私たちが

    行おうとしているアドボカシー活動の原点

    は、これと少し似ているかもしれないと思

    うようになりました。ひとりの人間が、何

    の打算もなく、自分の想うことを一途に始

    める。最初は誰もついてこない。けれど、信

    念を持って続けることにより、やがてひと

    り目のフォロワーが現れ、2人目のフォロワ

    ーが現れる。つづいて3人が5人になり、5人

    が10人になり…と増えていき…ある時点で、

    社会を動かすムーブメントが生まれていく。

    私はこの映像の存在をある人から教えてい

    ただき、大好きになりました。

    裸で踊りだす男―『最初のフォロワー(追従者)を作る』若尾 直子さん

     ある野外コンサートの観覧スペースで、ひ

    とりの男が裸で踊りだします。楽しげにひと

    りで無心に踊ります。周りの人たちはほとん

    ど反応を示さず、動こうとしません。そこへ

    フォロワーがひとり登場して、同じように踊

    りだします。最初となったフォロワーは群衆

    に向かって手招きをします。「一緒に踊ろう

    よ!」って。やがて3人目の男が現れて踊り

    に加わります。3人はそれぞれ無心に踊りつ

    づけます。すると、やがて周囲の人たちが少

    しずつ注目を始めます。そして、三々五々、

    踊りに加わる人が出てきます。ムーブメント

    が起こる大きな節目の瞬間です。やがて周囲

    から人びとが我先に駆け寄ってくるようにな

    ったと思うと、ある瞬間、大勢が雪崩のよう

    団体の活動事例20

     「より良い治療環境をつくる上での協働」を、

    ①「医薬品の開発」

    ②「自己管理」

    ③「患者中心のチーム医療」

    ④「医療者の啓発活動」

    ⑤「その他(全般)」

    の5つのサブテーマに分けて紹介されました。これらの事例は、今後、疾患を超えて幅

    広く応用され、また団体を超えて一緒に行動、相談できる横の繋がりができることによ

    り、あらゆる立場の人々が自立する医療に繋がることが期待されます。

     ワークショップの発表内容、特に「活動において大変だったこと・苦労したこと」を振り返って

    問題を整理し、解決のためにはどうしたらよいか考え、今後のアドボカシー活動に活かす方策につ

    いて意見交換を行ないました。

    パネルディスカッション ~成功事例から学び、今後のアドボカシー活動へ提案する~

    共通のテーマは、啓発、アドヒアランス*2、そしておカネ

    座長:日比野 守男さん

    パネリスト:関原 建夫さん、小林信秋さん、 若尾直子さん

    *2アドヒアランス: 患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること

    *巻末に事例集を別添いたします。ご参照下さい

  • Do More, Feel Better, Live Longer Patient Advocacy

    小林:難病の子の親として活動を始めて 25 年になりますが、すべきことをきちんとしていれば、

       おカネは自ずと集まってくるように感じます。親が集まって活動しているうちに医療者との

       繋がりができ、教育や福祉のほうから人が寄ってきてくれ、国と協働することになり、他団体

       や学会との連携も始まり…というふうに人の輪が拡がって、気付いたら多くの方たちから応

       援をいただくようになっていた。走り回っているうちに、いつの間にかこうなっていた、とい

       う印象があります。

    参加者A:私たちのところでは「走り回るための服を買いに行くための服がない」というような

        行き詰まり感があります。

    参加者B:おカネの集まり具合には団体の個々の事情が影響するのではないでしょうか。どのよう

        な種類の疾患か。患者数はどれくらいか。対象者は子どもか、大人か、高齢者か。それ

        ぞれ条件が違うから、同じように走り回ったからといって同じように集められるとは限

        らないと思います。

    日比野:まず、パネリストの3氏から、発表を聴いて

        の感想をお聞かせください。

    小林:やはり啓発は永遠のテーマだな、と思いました。

    若尾:アドヒアランスも共通のキーワードだと感じま

       した。

    関原:発表では意外に「おカネ」の話が少なかったよう

       に感じましたが、実はこれ、非常に重要なテーマ

       だと思います。日本は今、経済・財政的に相当深

    目的、社会的意義、ビジョンを明確に示して社会の共感を得る

    患者団体代表者の発表を聞いて

    刻な状態にあります。福祉を国や自治体だけが担う形はとうに限界にきている。患者支援団体

    が参画しないとうまく回っていきません。ただ、患者支援団体も資金面でしっかりしていなけ

    れば十分な活動もできないし社会的認知も得られません。

    関原:いずれにせよ、外から資金を集めてこようとする時には、団体の活動目的、社会的意義、ビジ

       ョンを明確に発信することが重要です。

    若尾:自分が受けたギフトを社会に返したいという思いが私たち支援活動をしている者には共通

       してありますよね。お金持ちの人たちにも、社会から受けたギフトをおカネの形で社会へ還

       元しようという意識が芽生えてくれたらいいですね。社会のムーブメント作りを意識した

       発信も重要かもしれません。

    入会者が増えないという悩み

    若尾:一方で、患者会への参加が少ないという悩みも聞かれました。

    小林:これも昔から議論されてきた問題ですね。

    若尾: 患者の声を伝えることが状況の改善につながるという認識を多くの皆さんに持っていただ

       けるといいのですが。

    小林 :息子の発症後まもなく主治医から患者会の立ち上げを提案された時、初め私は「傷を舐め合

       ったって病気が治るわけじゃない」と思ったんです。女性は横の繋がりの重要性をよく理解

       するけれど、どうも男には実利ばかりを気にする傾向があるようです。しかし疾患が稀少で

       仲間が少なければなおさら皆で協働しなくてはならないし、更には疾患の枠を超えて繋が

       っていくことも重要になるんですね。

  • Do More, Feel Better, Live Longer Patient Advocacy

    日比野:メディアの世界にいた者として感じたことを述べます。活動を世にアピールするために、

        メディアをもっと上手に活用するとよいと思います。例えば、何らかのイベントを開催す

        るときは前もってメディアへ伝え、社会へ向けた告知を依頼します。イベント開催日の少

        なくとも 2週間前に地元の新聞社へ案内を送ります。宛先は「○○新聞 編集局」、そのあと

        に掲載欄が分かっている場合には欄の担当部署名、掲載欄が分からないときは「お知らせ

        欄 掲載お願い」と付記するといいでしょう。もうひとつ、患者団体のネーミングについて。

        団体の名称は、誰が見ても一目で象疾患の種類が分かるようなものが望ましいと思います。

        別称として併記する形でもよいですから、ぜひ対象疾患を明記するようおすすめします。

     

    もっとメディアを活用しよう

    参加者 C:入会者が少ないのは、患者会が首都圏に集中してしまっているのも一因かと思います。

    参加者 D:私たちのところも会員が少なく、しかも必ずしも積極的な会員ばかりではないので、

         マンパワー不足に悩んでいます。会員が受け身にならないような活動の形を模索して

        いるのですが。

    参加者 E:私のところは乳がんの患者会ですが、現在、会員数は 300 人。かつては 500 人いた時期

        もありましたが徐々に減ってきています。インターネットで個人が情報を得られる時代

        になり、患者会に所属する必要性を感じにくくなっているのかもしれません。

    関原:日本の患者は医療について大方は満足しているんですよ。欧米に比べれば圧倒的に治療は

       優れているし、コストは安い。自ら動こうと決断するほど不満が蓄積していない。これだと

       思いますよ、入会者数が伸びない最大の要因は。ただ、いまや日本の社会はものすごい勢い

       で変わってきていますからね。家族や地域社会や企業社会が総合的に担ってきたものを、

       今後は私たち一人ひとりが協力して担っていかなければなりません。それと、患者会とし

       て考えなければならないのは、あらゆる要望のうちどれを取り上げてどれを削るか。本当

       に社会的意義のあるものを取捨選択するバランス感覚を持つ必要もあると思います。

    ワークショップ・パネルディスカッションからの「まとめ」

    カテゴリー 「大変だったこと、苦労したこと」 今後のアドボカシー活動に生かすアイディア

    ドラッグラグの存在 年間700億円の財源に対する医薬品開発の必要性の提言

    治験・臨床試験の情報が患者に伝わっていない

    臨床試験をする上では国の整備が進んでいない

    アドヒアランスを高めるための学習会への参加率が低い会員数の増加だけでなく患者会の質の向上の検討ホームページ・SNS (インターネット上の、ネットワークサービス)の活用

    患者会への参加意欲が低い=患者会の社会的意義が認知されていない

    患者団体間の協力した市民への投げかけ地域に根差す活動と、中央(国)への働きかけの活動患者団体の集まりの周知(J-PALSの発信)

    医療者と患者との溝が深い医療機関の情報を患者が調べきれない

    医療機関からの情報提供方法の周知患者団体の協力したデータベース構築→治験への貢献等のベネフィットの享受

    ③患者中心のチーム医療患者自身が制度やサービスを消化していない

    病気の認知率は向上したが、自身の罹患の意識が低い自治体への働きかけ

    診断できる専門医の不足 企業の医薬品開発情報との連携

    患者会発信で治験参加適格者を集めた際には、個人情報の取り扱いに対して、その都度の同意取得が必要

    患者会が治験対象となる患者さんを集め、医療に貢献する体制づくり

    マンパワー不足、資金不足 一つの団体からの寄付ではなく、市民(個人個人)からのサポート(少額寄付の積重ね)を得る地域に根差し、マスコミの興味を引く活動を継続する。

    企業とパートナーシップを築く上では、企業側で制約が多い 企業だけでなく、公的な機関とパートナーシップを結ぶ

    患者会の存在の周知

    患者会の偏在化の解消社会に共感を得られる活動目的の設定社会へのギフト還元メディアの有効活用(お知らせ欄への事前投稿)

    見える形で成果を企業に還元できるのか作成した情報を、公的なものにするのは難しい

    行政を味方につける(足繁く通う、行政のリクエストに応える)

    疾患に対する偏見の存在→名乗って患者会活動をすることができない→就労先の企業が成功体験を共有しない

    患者会の名前から活動の概要が分かるような命名(メディアの立場から)

    ⑤その他

    臨床試験のコールセンターの検討①医薬品開発

    ②自己管理

    ④医療者の啓発活動

  • Do More, Feel Better, Live Longer Patient Advocacy

    今年のJ-PALSは、『患者支援団体の成功事

    例から学び、自立する医療につなげよう 

    パート1』として、より良い治療環境をつく

    る上での協働の活動事例について参加団体

    間で共有する機会を企画しました。患者団

    体の貴重な財産である“活動事例”を背景

    も含めて正しく理解し、各課題を吸い上げ、

    疾患・団体横断的に「新たな形」として発

    展的に進めることがイノベーションであり、

    自立する医療に繋がると信じます。今後、団

    体内そして団体間で継続して議論を進め、ま

    た是非J-PALSの場を利用し、紹介いただきた

    いと思います。来年第9回でも引き続き、パ

    ート2として、J-PALS参加者のニーズに沿っ

    たテーマで事例共有を中心とした情報交換

    と討論を進めます。

    そして第10回となる2015年では、市民・患者

    さんが自立する医療の実現に向けた、日本のア

    ドボカシー像を「新たな形」として具体的に構

    築できたらと考えております。皆さんの日々の

    活動と共に、J-PALSを育てていただいているこ

    とに感謝し、今後も変化する医療環境を視野に

    参加者の意見を伺いながら成長させていきたい

    と思います。

    閉会の挨拶            GSK 社長 フィリップ・フォシェ

    本日のまとめ、そして今後         GSK 患者支援対策室 遠藤 永子

    昨年に続き、GSK社長フィリップ・フォシェ

    も来場し、閉会の挨拶のなかで、J-PALSは働く

    意欲をいただける場であると述べ、これからも

    継続したサポートを行うことを伝えました。

    今回も皆さまの熱意あふれる活発な討論を

    拝聴させていただくことができました。毎

    年、多くの方が集ってJ-PALSという場を活

    用されている様子を拝見できるのは、サポ

    ーターのサポーターという立場にいる者と

    して嬉しいかぎりです。弊社の重要な考え

    方として位置づけている価値観のひとつに

    「患者さん中心」があります。J-PALSは、

    私たち社員がこの「患者さん中心」を再認

    識できる場となっています。この会社で働

    く意義を再認識できる場と言ってもいいか

    もしれません。本日も皆さまから大きな勇

    気をいただき、働く意欲が更に湧き上がっ

    てくるのを感じました。また、GSKには

    Orange Dayというボランティア休暇があり

    ます。この制度を通じても皆さんの活動を

    支援することもできると思います。J-PALS

    は次回、次々回へ向けて、さらに充実した

    計画を立てていく予定です。これからもよ

    ろしくお願いいたします。

  • 1

    医薬品の開発

    NPO法人 PAH の会【肺高血圧症】 “世界で使用されている治療薬を日本にも”

    肺高血圧症は生命に係わる進行性の稀少疾患です。海外では承認済みでありながら日本では未承認

    の薬剤のうち特に「医療上の必要性が高いもの」を厚労省が公募した際、当会は4剤を提示しました

    が、そのうち2剤が開発を認められて、現在、治験が行なわれています。国内での新薬承認は海外に

    比べほぼ 10年遅れているとも言われます。ドラッグ・ラグの問題に対して今後もさまざまな方策を

    試みていきたいと考えています。

    NPO法人 ブーゲンビリア【がん】 “命のバトン 薬はみんなで作るもの 治験について考える”

    昨年、設立 15 周年記念事業の一環として、「いのちのバトン 薬はみんなで作るもの ~がんの臨床

    試験・治験について患者・市民の視点で考える~ 」をテーマに、アンケートや勉強会、シンポジウ

    ムを実施しました。そのときに見えてきたのが、① 新薬の研究・治験に関する患者・市民への情報

    提供の不足 ② 治験推進のための国策の整備の不足、といった問題です。当会ではいま、これらの問

    題への対応策の1つとして、患者に新薬情報を十分に提供するための電話相談センター「治験コール

    センター」の設置を提言しています。

    一般社団法人 全国パーキンソン病友の会【パーキンソン病】“臨床データ、研究用データ” 山中伸弥教授が iPS細胞の研究でノーベル賞を受賞した折から、神経難病であるパーキンソン病

    の治療法に対する研究者の開発意欲はこれまでになく高まっています。当会では医療研究体制の充

    実化に対する患者側からの貢献を目的として、データベースの設立および治験への協力を推進して

    います。家族性患者の会員を対象にデータの登録を呼びかけ、すでに 30数名の登録を得ました。今

    後、このデータベースを基に細胞移植→疾患メカニズムの解明と研究が進んで創薬が実現していく

    ものと期待されます。データのセキュリティ管理に細心の注意を払いつつ、今後も登録数の拡大を

    目指します。

  • 2

    自己管理

    NPO法人 環境汚染等から呼吸器病患者を守る会【アレルギー/呼吸器】“患者による患者教育”

    気管支喘息や COPDなど慢性呼吸器疾患を主対象として、患者と医療関係者から成るメンバーで学

    習会中心の活動を行なっています。活動の1つに「患者による患者教育」があります。闘病歴あるい

    は患者会活動歴が1~2年を経過した会員のうちペーパーテストに合格した方を熟練患者と位置づけ、

    ベテラン患者として初心者患者の教育に当たってもらっています。会員の自己管理技術が進歩し、治

    療効果の向上へつながっています。

    一般社団法人 高知がん患者支援推進協議会【がん】“患者・家族を地域で支える仕組みの確立”

    高知県の委託を受けて5年前から「相談センター」を運営し、年間およそ 1300件の相談を受け、

    全件解決を目指して、医療情報の提供、スピリチュアルケア、在宅療養者に対する家庭訪問など、相

    談者のニーズに応じた支援を展開しています。活動の中で感じるのは、医療者と患者の間に横たわる

    深いミゾの存在です。セカンドオピニオンさえ理解されない事例が地方ではいまだに見られます。病

    院内の相談センターとは一線を画した第3者機関として、患者と家族が安心して療養に臨むことがで

    きるよう活動を続けていきたいと思います。

    認定 NPO法人 日本アレルギー友の会【アレルギー】“全国の患者さん、熱意、協働、有効活用”

    喘息患者にとって喘息日記は自己管理のツールとしても医療者との対話のためのツールとしても

    非常に重要なものです。しかし従来、専門病院や製薬企業が独自に作成したものはあっても、公的な

    ものはありませんでした。そこで 2012年、当会は他団体と協働して日本アレルギー協会・学会に対

    しピークフロー値を記入できる日記の普及に関する要望書を提出、その後日記の作成の検討に取り組

    むことになりました。グラクソ・スミスクライン社製の既存の日記を準用することで時間・経費の節

    約が図れました。今後も他団体と協働して患者の QOLの向上に力を注いでいくつもりです。

    NPO法人 ブーゲンビリア【がん】“マネジメント力とコントロール力。 患者力・患者の自立”

    「話すことは治ること・聞くことは気づくこと・書くことは癒えること」を合言葉に、足かけ 16

    年、おしゃべり会を開催しています。この会に参加することで患者は治療について学習し、コミュニ

    ケーション能力を磨き、心と頭の整理を図ることが可能となり、それが自己管理能力の向上、薬によ

    る副作用発生の予防、前向きな治療姿勢の醸成へつながっています。従来は女性のがんのみを対象と

    してきましたが、本年度から非感染性疾患(糖尿病・慢性心疾患・がん・高血圧など感染しない慢性疾

    患:NCD)全体に対象を拡げた「NCDのおしゃべりサロン」もスタートさせました。

  • 3

    患者中心のチーム医療

    全国ファブリー病患者と家族の会 ふくろうの会【ファブリー病】“悩みを解消し活力ある生活を”

    ファブリー病は小児期に発症することが多く、激しい四肢疼痛、発汗障害、目の異常、聴覚低下、

    胃腸・腎臓・脳・心臓の障害などに加え、罹患ストレスから生じる心理面での QOL低下などさまざま

    な困難を伴う稀少難病です。周囲の理解を得られにくく、社会生活(学校生活・就学・就労)や家庭

    生活上でも困難を強いられています。情報が適切に届いていないために正しい治療や行政支援を享受

    できずにいる患者が多数いることも大きな問題です。当会では、患者とその家族の QOL を考えた情

    報提供と相談、社会啓発の 3 つの視点から、全国主要 5 地区で「オープンセミナー&交流会」を開催

    しています。

    NPO法人 肺高血圧症研究会 APH【肺高血圧症】“わかちあい”

    患者と医師・看護師・薬剤師など多職種医療従事者とがいかに協働すれば患者中心の医療を実現で

    きるか?それを念頭に置いて活動しています。「医療者を巻き込む」という視点から生まれた活動と

    して、主に看護師を対象とした① 「患者と医師から学ぶ肺高血圧症セミナー」の開催 ② 主に医療

    系学生対象の「足湯ボランティア隊」の結成 があります。薬剤開発の専門家である製薬企業とも、

    より水平な関係性の中で互いに遠慮なく意見交換ができる場を持てたら素晴らしいと思います。

    医療者への啓発活動

    肺塞栓症・深部静脈血栓症友の会【肺塞栓症/深部静脈血栓症】“肺塞栓・血栓・医療安全”

    当会が発足した 2002 年当時、肺塞栓症は年間 2000人の犠牲者を出す疾患であるにもかかわらず、

    一般にはまだほとんど知られていない存在でした。その後、スポーツ選手の発症がきっかけとなり「エ

    コノミークラス症候群」として徐々に認知されるようになりました。当会も予防法の普及を医療者団

    体に要請するなど啓発活動を行なってきました。弾性ストッキングによる予防法に医療保険が適用さ

    れるなど成果もありましたが、一般人のみならず医療者の間でも今なお疾患リスクの認識が低く、出

    産時や高齢者の骨折入院時に発症・死亡する事例が発生しています。ひきつづき予防の啓発・普及に

    取り組んでいきたいと思います。

  • 4

    その他、全般の治療環境向上

    アリスプレイス【アレルギー疾患】“患者が編集した、患者向けテキストの作成”

    病気や障害があっても人として尊重され自分らしく普通に暮らせる社会の実現が私たちの目標で

    す。それには、どこに住んでも標準的な治療が受けられる体制や地域のネットワークの充実が重要な

    ポイントになると思います。課題として感じるのは一般社会への啓発です。自称「元気な」人たちは

    医療の問題に対する関心が薄く患者団体に対する評価も低いことが、当会が行なった調査でも明らか

    になっています。患者団体には、こうした人たちにも病気を持つ人を共に支える活動の意義をしっか

    り伝えることが求められていると思います。

    イデアフォー【がん】“乳がん治療に関する病院アンケート”

    当会は、1989年当時 5%に満たなかった乳房温存療法に奇跡的にたどり着くことのできた患者数人

    が療法の普及を願って結成した市民グループです。アンケート調査を活動の中心とし、医療施設ごと

    に乳房温存療法実施率や薬物療法の実態を経時的に調べてきました。解析まで自らで行うことにより、

    正確な情報を患者に提供して、受診施設選択のためのツールあるいは医療者とのコミュニケーション

    ツールとして活用していただいています。温存率が6割を超えた現在でも、受けられる治療が施設や

    医師によりマチマチである状況の下、活動の社会的意義は小さくないと自負しています。

    眼瞼・顔面けいれん友の会【眼瞼けいれん・片側顔面けいれん】“啓発活動、患者相互支援の組織”

    まぶたが開かない。眼が見えない。病名がわからない。生死に関わる疾患ではなく、また病気とは

    気付きにくく、医療者・一般社会の無理解のなか、患者のほとんどが、著しい QOLの低下に苦しんで

    います。さまざまな診療科でさまざまな病名を告げられ、正しい診断に行きつくまでに重症化してし

    まう傾向があります。当会では患者に対する情報提供および精神的支援と、医療者・一般への啓発活

    動を行なっています。この疾患の唯一の患者団体として東京を拠点に活動してきましたが、いま関西

    でも患者会を立ち上げたいという声が上がっています。難病指定へ向けた活動も展開していきたいと

    考えています。

    NPO法人 がんサポートコミュニティー【がん】“コミュニティー/循環型社会、ビジネスモデル”

    一般へのがん啓発と活動継続のための資金的基盤の整備を目的として、2011年から毎年、「大阪マ

    ラソン」に参画しています。「大阪マラソン」は約3万人の参加ランナーが 500円ずつ寄付をする仕

    組みの市民型チャリティマラソンで、開催直前の 2日間には「大阪マラソン EXPO」というイベント

    が開かれます。当会はこの EXPO に参加して、患者の体験談を提供し、早期発見・早期治療の重要性

    を訴え、がん予防撲滅のための募金を呼びかけています。今後は行政(大阪府・大阪市)や報道機関、

    医療機関といった地域コミュニテイと協働して地域に根差した支援活動を展開し、寄付循環型社会の

    ビジネスモデル構築を目指しています。

  • 5

    NPO法人 キャンサーネットジャパン【がん】“Know(≠No)More Cancer!”

    患者、家族、社会の3者が正しくがんを理解し、患者が適切な治療選択をして生きがいのある日々

    を過ごせる社会を目指し、患者、家族、医療者が共に活動しています。セミナー開催、ネットでの動

    画配信、冊子配布の形で継続的に情報提供を行なっています。日ごろ困難を感じるのは、企業との協

    働に限界が感じられるときです。製薬会社など関連企業とパートナーシップを組んで活動しようとす

    るとき、担当部署の社員との間では良いアイデアが出て盛り上がっても、企業内ルールが厳格で制約

    が多いせいで最終的には実現までたどり着けないことがあります。今後、より公共的に情報を広めて

    いくことの重要性を推進したいと考えています。

    NPO法人 相模原アレルギーの会【アレルギー疾患】“食物アレルギー、調理”

    慢性のアレルギー性疾患および呼吸器疾患を持つ患者の会です。一般の啓発も視野にいれた講演

    会と、患者主体の勉強会「ミニ講習会」を開催しています。自己管理技術の向上を狙って、乳幼児

    の保護者を対象に食物アレルギーの調理実習を「ミニ講習会」で企画したところ、非常に好評でし

    た。管理栄養士による講義を通して食物アレルギーや誤食時の対応法などについて学習していただ

    き、市販食材を使って実際に調理・試食をしてもらいました。座学中心の学習から一歩踏み込んで

    体験を通した学びを提供した点が高評価につながったようです。

    全国慢性頭痛友の会【慢性頭痛】“学校・職場への啓発、理解”

    片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などを対象疾患とする会で、会員数は 650 名です。片頭痛だけでも国内

    患者数が 840 万人に達することを考えると非常に少ないと言わざるを得ません。QOL を下げる辛い疾患

    であるにもかかわらず受診率も欧米に比べて日本は低いと言われています。これには慢性頭痛に対する理

    解不足や日本人特有のガマン強さが影響しているものと思われます。「たかが頭痛で・・・」と考える傾

    向が一般社会だけでなく医療者や患者自身にさえあるのです。慢性頭痛は治療が必要であり可能でもある

    病気だという認識を広めることが重要です。当会では患者の主治医、勤務先、就学先を啓発対象として視

    野に入れ、専門医の講演録や患者の声を掲載した訴求力の高い会報を作成しています。

    NPO法人 東京肝臓友の会【肝臓疾患】“自治体からスタートした医療費助成”

    2004年、C型慢性肝炎の治療として内服薬との併用によるインターフェロン治療が保険適用となり

    ましたが、医療費が3割負担でも 50~150万円になってしまうため、患者が実際に恩恵を受けるのは

    難しいことが懸念されました。そこで当会は東京都に対し、当該治療に対する医療費助成を求める要

    望書を提出しました。その後、有識者会議による後押しなどもあり、2007年 10月にインターフェロ

    ン併用療法に対する都の医療費助成が実現、翌 2008年には国による助成も実現しました。自治体の

    決定に国も動かざるを得なくなったのでしょう。大きな意義のある活動だったと自負しています。

  • 6

    ねむの会【がん】“教育現場(県立高校)へがん教育”

    設立時から乳がん患者の会として活動してきましたが、2012年にがん全般を対象とする患者会に

    変更しました。教育現場における啓発活動の1つとして、2007年から千葉県内の高校生を対象に「健

    康セミナー」の出張講座を開催しています。患者の体験談や医師の講義を提供して、乳がん、子宮頸

    がん、肺がんを中心に子どもたちに学習してもらう講座です。喫煙の害や生活習慣の重要性にも言及

    して子どもたちの健康意識の向上に貢献し、好評を得ています。このような取り組みが多くの高校に

    広がってほしいと考えています。

    肺高血圧症患者家族の交流会【肺高血圧症】“薬剤の選択、ジェネリック医薬品”

    個人的体験からの私見ですが、薬剤の選択において、先発品にするか後発品(ジェネリック医薬品)

    にするかは医療者でなく患者自身が決定すべきではないでしょうか。かつて私は先発品の処方を望ん

    だにも関わらず医師に聞き入れてもらえずにジェネリックを処方されたことがあります。背景には国

    がジェネリック使用の促進、また病院の都合が影響しているのでしょうか。患者が持つ権利を代弁す

    るためにも、今後、同じ薬剤を利用している仲間と情報交換をして実態を調べてみたいと思っていま

    す。

    NPO法人 ぷれいす東京【 HIV 】“HIV陽性者の長期療養時代、HIV陽性者理解のための職場研修”

    当会は HIV陽性者とその周囲の人たちへの支援を目的に 1994年に設立されました。HIVは、新し

    い薬剤・治療法が次々と開発されたおかげで、完治こそしないものの当事者が支障なく日常生活を送

    れるまでになりましたが、感染にまつわる誤解や偏見が残存しており、社会啓発の必要性を感じます。

    当会は就労に関する相談を受けることが多く、就業希望者と企業のマッチングを支援しています。陽

    性者採用で成功体験を持つ企業もありますが、そのことを社会へ向けてオープンに発信しようとする

    ところが少なく、雇用促進に繋がらない点が残念です。